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辞任まで“あまり”に強気だった理由

2016年1月29日(金)

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 以前にも書いたことがあると思うのだが、私は、「政治とカネ」というこの決まり文句を耳にする度に、微妙にイライラした気持ちになる。理由は、「政治とカネ」が、具体的に何を指し示しているのかについて、この見出しは、結局のところ、何も説明していないからだ。

 そもそも、「政治とカネ」というこのフレーズは、抽象名詞を二つ並列させただけのもので、ひとつの文として完結していない。

「花と蝶」
「酒と涙と男と女」
「部屋とワイシャツと私」
「オレとお前と大五郎」
「ネギとイモ」
「木村と中居」

 これらは、実のところ何も語っていない。
 それぞれの単語がもたらすそれぞれの映像と、関係を匂わせる物語の予感と、余情と余韻と余白以外には、何も伝えていない。
 主語も述語も無い。
 言わばポエムの断片に過ぎない。

 にもかかわらず、二つの名詞を一音節の接続詞でつなげただけの成句である「政治とカネ」は、深い含蓄のあるヘッドラインであるかのように連呼され、意味のある描写であるかのように受け止められ、巷間に流布し、市中を席巻し、時にはその言葉で語られた人間の政治生命を奪っている。

 バカな話だと思う。

 「政治とカネ」というこの言葉は、もともとは

「政治とカネの不適切な関係」

 ないしは

「政治とカネの関係をめぐる不透明な話題」

 ぐらいの言い方で流通していたフレーズで、それが、たびたび使われるうちに、後半部分が省略されて一息で発音できる見出し用語におさまった事例だろう。

 であるからして、この言葉の守備範囲は、「不適切な関係の人間から手渡された政治資金」や「適正な法的処理を経ていない寄付金」や「政治家が便宜供与への見返りとして受け取った不透明な謝礼金」や「帳簿上は政治家の事務所から支出されたことになっていながらその実関連企業が負担している秘書給与」や「後援会主催のパーティー券を介して政治家に直接還流している運動資金」といった、大小様々なカネをめぐるスキャンダルに及んでいる。大変に使い勝手がよろしい。なぜなら、「政治とカネ」とさえ言っておけば、たいていの政治家のスキャンダルはひとっからげに捕捉できてしまうからだ。

 一方において、この「政治とカネ」というキーワードは、「職務権限に関わる贈収賄」のような重大な犯罪と「帳簿上の記載ミス」のような、軽微な資金問題を一緒くたに語ってしまう粗雑さをはらんでもいる。

 ある政治家が後援者に配った夏祭りのうちわの代金が適法的に処理されていなかった問題と、別の政治家が職務権限の行使に関連して便宜を供与したと見られる業者から酒食の接待と数百万円の現金を受け取った事案は、その犯罪性や重大性において相当に重みの違う事件であるはずなのだが、新聞紙上では「政治とカネ」という同じ見出しの下にまとめられてしまうことになる。

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「辞任まで“あまり”に強気だった理由」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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