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独裁の果てに兄は果つ

2017年2月17日(金)

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2012年の4月に、風来坊のお兄ちゃんを応援する気持ちで描いた絵です。セリフ部分にちょっと手を加えました(著者)

 金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された。

 事件の背景には、不明な点が数多く残されている。とはいえ、氏がマレーシア・クアラルンプールの空港で倒れて死亡したことははっきりしている。今のところ、複数の北朝鮮関係者による毒殺とされているようだ。

 日本経済新聞が韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の当局者の話として伝えているところによれば、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が、マレーシアで殺害されたとみられる異母兄、金正男氏について「嫌いだ。除去しろ」と述べ、殺害の実行命令を下したのだそうだ(こちら)。

 なんと。
 本当にこんなことが起こるとは。
 あまりに荒唐無稽でいまだに信じられない。

 まるでデキの悪い80年代の香港映画の中の、笑わせる意図で作られながら描写が残酷過ぎて誰も笑わない一場面みたいな、どうにも粗雑な殺人事件だ。

 とはいえ、ぞんざいで無意味だからこそ、今回のこのむごたらしい措置のもたらす衝撃は、この何年か恒例化しているかに見えるミサイル発射実験よりもずっと深刻だといえる。

 事実、私は北朝鮮に対する考えを改めつつある。
 同じ気持ちを抱いている日本人は少なくないはずだ。

 国際政治の成り行きは、核弾頭の数や、ジェーン年鑑に載る火器その他の総数で決まるだけのものではない。
 外交の大きな部分は、それを眺めるわれら一般国民の感情を反映する形で動いている。

 その意味で、このたびのこのいかにも無造作な殺人のもたらす影響は無視できない。
 死んだ人間の数は一人だ。過去に多くの人々があの国の独裁体制維持のために殺されてきたはずだ。だが、人々に「非業の死」を身近に感じさせた点で、よく知られた人物が公然と殺されたことの意味は小さくない。

 隣国がどんな軍備を持っているのであれ、武器や軍隊そのものだけではいきなり脅威にはならない。
 たとえばの話、隣家の人間が刀剣マニアだったのだとしても、そのこと自体がこちらの生活をおびやかすわけではない。

 おそろしいのは、武器そのものよりも、それを持っている人間だ。真に人々を慄然とさせるのは、武器を手にした人間がその身の内に備えている人間性の闇の深さだと言っても良い。

コメント57

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「独裁の果てに兄は果つ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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