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「なあなあの善意」という感染症

2017年3月10日(金)

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 前回はインフルエンザを理由に、お休みをいただいた。

 このたび私が罹患したインフルエンザは、B型というタイプで、症状と経過は、最初に診断してくれた医師の説明通りで、具体的に申し上げると、A型に比べてそれほど高い熱が出ない(今回私が記録した発熱は、何度か到達した38.9℃止まりだった)半面、タミフルが効きにくく(実際、ほとんど効果を実感することができなかった)、症状が一進一退で、完治に時間がかかったということだ。

 おかげで、まるまる5日間、発熱と頭痛で苦しんだ。まあ、私が暗示にかかりやすいということだったのかもしれない。

 そんなこんなで、先週は、当欄をはじめ、週内に設定されていたスケジュールをまるごとキャンセルして、1週間仕事をしなかった。

 で、休養十分でリフレッシュできたのかというと、それがそういうことにもなっていない。
 むしろ、休んだ分だけ、再起動が億劫になっている。

 これは、毎度、正月やお盆休みの度に経験することだ。私は、休めば休むほどあらためて仕事に復帰することがつらくなるタチの人間であるらしく、長く休むと、それだけ社会復帰に苦労する。あるいは、毎年、夏休み明けの9月に登校拒否気味の無気力状態に陥っていた小学生時代の設定が、いまだに更新されていないのかもしれない。

 正直な話をすると、いまだに、仕事に取り組む意欲が湧いて来ない。
 結局、ふだんから自転車操業の勢いで仕事をこなしている人間は、あんまり休むべきではないのだろう。

 次の機会に、長い休みを取ったら、たぶん、私は二度と歩き出すことができなくなると思う。長い上り坂のてっぺんで立ち止まったロバみたいに、私はまだ坂の途中にある荷車に引きずられて、後ろ向きにどこまでも後退することになるだろう。一度、落ち始めたら、もう前に進むことは不可能だ。そんなふうにして、私たちは働いている。

 休んでいる間は、テレビも見ず、ツイッターもろくに閲覧しなかった。
 熱が出ている間は、動く画面や文字を読むと、嘔吐感がこみあげてくるからだ。

 なので、熱の下がることの多い午前中の時間帯に、メールとツイッターをチェックして、あとはほとんど丸一日横になって過ごしていた。

 休んでいる間、よく見ていたのは、森友学園関連のニュースだ。
 このニュースに強く惹きつけられていたからではない。

 私が、このニュースのチェックに多くの時間を費やしていたのは、単にこの10日ほど、ネットと言わずテレビと言わず、世間の話題がこのニュースでもちきりだったからに過ぎない。

 私個人は、森友学園のニュースから伝わってくる空気の不潔さに、むしろうんざりしていた。
 なにより、登場人物のいちいちがどうも見苦しい。彼らを告発している側の人間のマナーにも、美しくない所作が見え隠れしている。

 思うに、この瑞穂の國記念小學院の設立をめぐる一連の出来事には、わたくしども日本人がひとかたまりの集団として統一行動を取る時に顕在化しがちな、特有の浅はかさのようなものが、非常に典型的なカタチで露呈している。

コメント53

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「「なあなあの善意」という感染症」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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