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悲劇が偏見を強化する

2016年5月27日(金)

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 沖縄で20歳の女性が米軍嘉手納基地に勤務する軍属の男性に殺害される事件が起こった。

 東京の東小金井でも、同じ20歳のシンガーソングライターとして活動していた女性が、ストーカーの男に刺されて意識不明の重体となる殺人未遂事件が発生している。

 二つの事件に直接の関連は無いが、若い女性が襲われたショッキングな出来事だっただけに、反響は大きい。
 今回は、二つの事件への世間の反応を見比べることで、われわれが、軍隊や基地や芸能界のビジネスにどんな気持ちを抱いているのかを考えてみたい。

 こういう痛ましい事件が起こると、当然の反応ではあるのだが、人々は、悪者を探しにかかる。

 もちろん、悪者は、いずれの事件においても犯人だ。

 犯行についての95%以上の責任は、ただただ犯人の一身に帰せられなければならない。この点は誰の目から見てもはっきりしているはずだ。

 ところが、この種のあまりにも理不尽な犯罪を目の当たりにすると、人々は、犯行への見方を単純に処理することができなくなる。で、中には、犯人を責めるだけでは満足できず、犯人以外の悪者を探しはじめる人々が現れる。

 沖縄の事件では、犯行の当事者たる犯人もさることながら、その犯人の所属母体である「基地」ならびに「軍隊」の存在が強く非難される展開になっている。

 というのも、これまで、沖縄では、米軍の関係者による暴行事件や不祥事が途切れることなく続いていたからだ。

 しかも、琉球新報の調べによれば、在日米軍の兵士と軍属の法的地位を定めた日米地位協定で、米軍関係者による「強姦」が起訴前の身柄引き渡しの対象とされているにもかかわらず、1996年以降に摘発された米兵35人中、8割強に当たる30人が逮捕されず、不拘束のまま事件処理されていたことがわかっている(こちら)。

 こうした状況を踏まえて考えれば、沖縄の人々が、この事件を、単なる偶発事故とは見なさず、基地という環境がもたらした必然の災厄であると受けとめるのはむしろ当然の反応と言って良い。

 別の見方をする人々もいる。
 たとえば、中山成彬衆議院議員は、女性の告別式があった5月20日に、こんな文言をツイッターに書き込んでいる。

《沖縄で米軍属による殺人事件が発生した。結婚前の愛娘を殺された身内の悲しみと怒りは深い。折角のオバマ大統領の広島訪問に冷水を浴びせた。原爆投下には謝罪しない大統領も謝罪せざるを得ない。辺野古移転反対の活動に弾みをつける。折からの県議選にも影響する最悪のタイミング。今から沖縄に出発。》(こちら

 この「最悪のタイミング」というフレーズは、ほかにも何人かの政府関係者や閣僚が報道陣に対して語ったと伝えられている。

 こういう事件に直面して、「タイミング」という言葉が出てくるのは、その言葉を発した人間が、被害者やその遺族の立場や心情よりも、事件がもたらす政治的な波及効果の方をより強く意識しているからだ。

 たとえば自分の家族が急死した時に

「こんな忙しい時に葬儀なんて最悪のタイミングだ」

 と思う人間はまずいない。そう考えてみると、何気ない一言ではあるが、この「タイミング」という言葉は、その言葉を発した人間の内心をあまりにも雄弁に物語ってしまっている。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「悲劇が偏見を強化する」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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