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なぜ御社に有望新人が現れないのか

2017年7月21日(金)

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 聖路加国際病院の名誉院長、日野原重明さんが亡くなった。
 105歳だったのだそうだ。

 意外だったのは、私の周囲にいる同世代の人間の多くが、このたびの日野原さんの死にショックを受けていることだ。

 意外、という言い方は、不謹慎かもしれない。

 が、10年以上前に、父親を70代で見送っている私の実感からすると、105歳のご老人の大往生を惜しむ人がこれほど多いことには、やはり驚かされてしまうのだ。

 「永遠に死なない人だと思っていた」

 という感じのコメントをツイッターに書き込んでいる人も多かった。
 なるほど。100歳を超えたご老人は、ある意味、象徴的な存在になるものなのかもしれない。

 でなくても、この日野原重明という人の言葉や生き方に勇気づけられていた日本人は少なくなかったはずだ。

 平凡な感慨だが、長く生きた人の死は、その人が生きた時代の死でもある。とすれば、日野原重明氏の死によって、何百万人の人々の心の中で保持されていた何かが一斉に死んだわけで、これは、単なる一個人の死では片付けられないできごとだったのだろう。ご冥福をお祈りしたい。

 今回は、高齢化について近頃考えたことなどを記録しておこうと思っている。

 政局があわただしいこの時期に、あえてこのネタを扱う理由は、時事問題に鼻を突っ込むことに少々嫌気がさしているということもあるのだが、昨年の秋に還暦を迎えて以来、自分の年齢について考える機会が増えているからでもある。

 頭の中で考えていることは、いずれ書かれなければならない。
 でないと、書かれなかった思念は、滞った血流や、野積みにされた生ゴミのように、いずれ悪い病気に結晶する……などと、大真面目にそんなふうに思い込んでいるわけでもないのだが、読む側の人間にどう映るのかはともかく、書く側の人間の仕事は、結局のところ、自分のアタマの中で起こる出来事に支配されているものなのだ。

 60歳を過ぎてからこっち、ツイッターなどを通じて「老害」という言葉を浴びせられる機会が増えた。

 個人的に、この種の指摘には反論しないことにしている。
 理由は、勝ち目がないからだ。

 自分より年齢の若い人間に「老害」という言い方で総括されることは、言ってみれば、当然の帰結だ。
 年上の人間に、「老害」と呼ばれたのであれば、私とて、一応の反撃は試みるかもしれない。が、相手が年下である以上、年齢の高低を争ったところで、こちらにははじめから勝算がない。

 背丈であるとか年齢であるとかいった、明白なエビデンスを伴った事柄については争わないのが、言論人のたしなみというもので、ここのところで争うと、かえって、年齢の大小を競うことに意味がある旨を自ら認めてしまうことになって、まことに具合いが良くない。

 なので、年齢の話を持ってこられたケースでは、穏当に無視するか、でなければ
 「おっしゃるとおりですね」
 てな調子で紳士的に対応することにしている。
 実際、おっしゃる通りだからだ。

 「老害」というこの言葉を発する人々の内心には、私個人への非難とは別に、「老人たちが社会を壟断して、若い世代の参入を阻んでいる現状」に対する抗議の気持ちがわだかまっている場合がある。

 で、これもまた、おっしゃる通りだったりする。
 あらためて見回してみると、たしかに、われわれが住んでいるこの国は、様々な分野で、いまだに老人支配が続いている。

コメント84件コメント/レビュー

いつもと違って素直に記事を読むことができた。
文中の「クリエイター」を「サラリーマン」に置き換えることで。

つまり、腕一本でのし上がる事のできた職人世界であった筈の「クリエイター」業界も、一般企業(サラリーマン)化しているということじゃないですか。(2017/08/07 11:10)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「なぜ御社に有望新人が現れないのか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつもと違って素直に記事を読むことができた。
文中の「クリエイター」を「サラリーマン」に置き換えることで。

つまり、腕一本でのし上がる事のできた職人世界であった筈の「クリエイター」業界も、一般企業(サラリーマン)化しているということじゃないですか。(2017/08/07 11:10)

気に入られるということ

もちろん可愛がられる人間性なども大事だと思いますが
ライターはライターなりの「気に入られ方」もあるのではないかと思います

ただ「ライターになりたい」「何か仕事ください」などと言うだけでは
聞いているほうも鼻白んでしまうだけではないかと思います

そのメディアをよく読み
編集者がどんなことを考えて作っているのか理解し
自分の守備範囲とどのように紐付けられるかを考え
ちゃんと調べ
実際に書いてみたり構想した上で
そのことを伝え
「ライターになりたい」「何か仕事ください」と言う

それが大事な「気に入られ方」の一つでもあるんじゃないでしょうか

編集者も人間だと思います
仕事だし飯食うためにビジネスライクにやってるだけに過ぎないと思いますけど
それと同時に
自分たちが作っているものを理解しようとする人に
それに対して自分なりに真剣に関わりたいと思う情熱をもって来てくれる人に
人はどんな歳になってもどんな立場になっても
出会いたいといつも思ってるんじゃないでしょうか

現実は知りませんのでこんなのは単なる夢想に過ぎないかもしれないですけど
「気に入られることが大事」というのは
そんな情熱を持って越えて来いよ
って言いたいんじゃないでしょうか

そんな出会いをいつまでも欲していること
そこには年齢も立場もないのではないかと思います(2017/08/05 00:54)

同じ物書きでも小説やエッセイであれば新人賞という形で有望新人が日の目をみることがありますし、
例えばゲンロンという東浩紀氏がやっている会社で大森望氏が主宰しているsf創作講座なんかは、側からみていて才能ある人のぶつかり合いが非常に面白いです。
こういうワークショップでは講師陣も刺激を受けるようで、将来は商売敵になるはずなのに、積極的に活動されているように思いました。
ところがライター、コラムニストとなると登壇の機会も限られますし、ワナビーを集めてどうこうするわけでもないですよね。
筆者が、なぜ現れないのか、と感じる理由は育成に触れたことが無いから、と思います。もし氏がそういうワークショップでもやっていれば、こんな結論にはならないと思うのです。若い才能は現れないのではなく埋もれているだけです。引っ張りあげるのは、先人の役目でしょう。(2017/07/28 10:44)

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