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誰にも正義は押し付けられない

2016年7月29日(金)

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 神奈川県相模原市で起こったひどい事件について、ようやくその概要を把握しつつある。
 第一報は知っていたのだが、続報は追っていなかった。
 避けていたと言った方が正確かもしれない。

 ツイッターのタイムラインに流れてくる断片的な感想を除けば、ついさきほどまで、私はマスメディアの情報を遮断していた。

 理由は、当初の段階での扇情的な伝え方が不快で、事件の詳細にアクセスする気持ちになれなかったからだ。
 なので、私は、事件の細部にはあまり詳しくない。概要を正しく把握しているのかについても自信がない。

 有り体に言えば、事件発生以来、いくつかのチャンネルから偶然に流入してきた情報と、この原稿を書くために、ついさきほどからニュース検索をした結果たどりついた記事以外には、情報を持っていない。

 ただ、正確な情報はつかんでいないものの、事件に誘発されてもやもやと考えていることはいくつかある。

 こういう事件が起こると、いつも同じようなことを考える。
 今回は、そのことを書く。
 事件そのものについてではない。
 どちらかといえば、事件を物語として消費させている回路について書くことになると思う。

 とはいえ、アタマの中に浮かんだ言葉を、そのまま言葉にしようとは思っていない。それをすると、たぶん、間違った伝わり方をする。

 この種のどうにも救いのない惨事について何かを書くにあたっては、極力、注意深い態度が求められる。無神経な書き方をすると、こちらの意図とは違う受け止め方をする読者を生むことになる。

 それだけではない。ためにする誤読を意図的に拡散する悪意ある煽動者が登場することも考慮に入れておく必要がある。つまり、私は、揚げ足をとられないように発言せねばならない。

 ウェブ時代の書き手は、タイプしたテキストの中に、無神経なものの言い方がひとつかふたつ含まれているだけで、すべてが台無しになってしまう環境の中で文章を書き進めることになっている。
 そんな中で、この事件は、書き手にとって扱いにくい事件だ。

 理由は、ざっと見て2つある。
 ひとつは、今回の事件の被害者の多くが知的障害者だからで、もうひとつは、加害者と見なされている人間が精神障害者と診断された過去を持っているからだ。
 この事件は、二重の意味でむずかしいわけだ。

 で、そのむずかしさが、事件報道を変な具合に加熱させている気がして、私はそこのところにも、もやもやするものを感じている。

 具体的に言うと、私は、事件について、テレビや新聞が、一定の留保を置いた報道を装っている印象を抱いているということだ。

 まわりくどい言い方をしてしまった。
 が、まわりくどい事情はまわりくどい言い方でしか説明できないということをどうかご理解いただきたい。

 実際に、テレビは、さまざまな部分にモザイクをかけたり、表現をやわらげたりして、自分たちが人権に配慮した報道をしているということを印象づけるべく、要所要所で奥歯にもののはさまったものの言い方を強調していたりする。が、全体としては、結局のところ、通常進行で、事件の詳細をあるがままにむごたらしく描写することに心を砕いている。

コメント73件コメント/レビュー

参考になる記事でした。

要は自分の境遇に対する不満を、ぶつけやすい相手にぶつけたということなのでしょうが、
それがなぜ入居者に向かったのか考えさせられます。犯人はテロを計画して施設に入職したわけではなく、優生思想は後付けなのでしょう。薬物の使い方によっては、期せずして自分で自分を洗脳のようなことになったのでは?とも思います。

それと、少し気になるのは福祉の世界のありようです。福祉に対する批判の一つは巨大なコストなのでしょうが、それが実際にどのように流れているのかなかなか伺いしれないところもあるように思います。実際に施設で働いて、優生思想を弱めるような状況というのはどうだったのでしょうか? もともとのパーソナリティのせいと言われればそうなのかもしれませんが。(2016/08/19 16:35)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「誰にも正義は押し付けられない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

参考になる記事でした。

要は自分の境遇に対する不満を、ぶつけやすい相手にぶつけたということなのでしょうが、
それがなぜ入居者に向かったのか考えさせられます。犯人はテロを計画して施設に入職したわけではなく、優生思想は後付けなのでしょう。薬物の使い方によっては、期せずして自分で自分を洗脳のようなことになったのでは?とも思います。

それと、少し気になるのは福祉の世界のありようです。福祉に対する批判の一つは巨大なコストなのでしょうが、それが実際にどのように流れているのかなかなか伺いしれないところもあるように思います。実際に施設で働いて、優生思想を弱めるような状況というのはどうだったのでしょうか? もともとのパーソナリティのせいと言われればそうなのかもしれませんが。(2016/08/19 16:35)

「効率向上」はもちろん大事。そして、それと同時に「多様性の増大」も大事。
一見すると矛盾する2つの両立が我々人類が生き残るための指標なんだな~(2016/08/02 21:42)

今、世間では、終活が流行り健康保険証・運転免許にはドナーの意思表示があり、尊厳を守るために意思表示証明書を作る。 そのような機会や判断をすることの出来ない方達が、社会の一員と、ある人の生きがいと、生き続ける事を強いられてはいないだろうか、尊厳はどこにいったのでしょうか。
私たちの社会は、優しいでしょうか、人道的でしょうか。 私は、優しくも人道的でも無いと思います。
そして、「障害者の生活と権利を全国連絡協議会」の事務局長の言葉に「結婚の際、家族に障害者がいることを理由に結婚の際、反対されることが今でもある」 と言う、これは傲慢な行為ではないだろうか、それとも不作為だろうか、
障害を持って生れたいと願う人はいなく、障害を持った子供を産みたいと願う人もいないのです。

ネットで国会議員の障害を持った子供のことで、曽野綾子さんが非難されていますが、高所得・富裕層は、自己負担を増やすべきです。あまつさえ税金から高額の給与を支給されていればなおさらでしょう。 他の方から見れば、「安心してください」などと、あんたが言うなとなるでしょう。

そして、何度も言いますが、「障害を持って生れたい人はいません」・「障害を持った子供を産みたい親もいません」が、現実には、生まれてきます。手助けの必要な方もいます。けれど、当然の権利をかざす人は少ないのです。が、中にはいます。それが現実です。
本音を言えば非難される。誰もがい思っていても、(2016/08/01 20:22)

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