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遊べない夏休み

2015年7月31日(金)

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 暑さに弱くなっている。
 長らく、入院していたからだと思う。

 エアコンで調整された空気の中で暮らしていたことが影響している。外出しなかったせいで、紫外線に弱くなっている部分もあるのだろう。

 そんなわけなので、梅雨が明けてからは、日のあるうちの外出は控えている。

 足の方はまだゆっくり歩けるところまでしか回復していない。仮に熱中症でフラついたような場合、自分が素早く日陰に避難したり、ぬかりなく水分補給する判断を下せるものなのかどうか、自信が無い。うっかりそのまま倒れてしまう気がする。

 いや、問題は、実際に熱中症で倒れるのかどうかではない。この際、大切なのは、私が、この春に経験した事故と骨折と入院を通じて、勇気によってではなく、臆病によってリスクを回避する知恵を身につけているということだ。

 これは、たぶん、ある意味では、進歩だ。
 この進歩が行き着くところまで行くと、私は、最終的に、天国にたどり着くことになる。
 そこまで行けば、もう恐れるものは何もない。

 当面は、夏が大好きだという自分の中の設定が崩れつつあることに、困惑している。
 本当のことを言えば、夏が好きだというのは、子供の頃の話で、いいかげんおっさんになってからは、夏はむしろ苦手だった。なにしろ暑いし、なにごとにつけて能率が上がらないからだ。

 なのに、相変わらず、自分の自覚の中では、夏が大好きだった子供の時分の気持ちを捨てきれずにいる。
 若い人間のつもりでいたいということもあるのだろうが、それ以上に、夏は、輝かしい思い出の多い季節という意味で、自分にとって特別なのだと思う。

 とはいえ、子供の頃を思い出して、本当に夏休みがそんなに楽しかったのかというと、実のところ、かなり怪しい。

 夏の間、私は、退屈していた。

 学校が無いことの解放感はありがたかった。
 しかしながら、それでもなお、連日連夜同じように休みの日が繰り返される真夏の日々は、結局のところ、遊びたい盛りの子供には、退屈だった。

 小学生の頃までは、毎年、8月のお盆の近辺になると、母親の実家があった静岡県の浜松というところに帰省していた。
 それが、夏の間の数少ない楽しみのひとつではあった。

 が、私は毎年、2日ほどで飽きた。
 それ以上に、田舎の暮らしのいくつかの部分にどうしても慣れることができなかった。
 たとえば、家の外にある電灯のない別棟のトイレがいやだった。
 だから夜の間は、用便に行けなかった。
 では、昼の間なら大丈夫だったのかというと、昼は昼で、常に虻がブンブン羽音を立てていた。
 なので、昼の間も、私はトイレに行くことができなかった。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「遊べない夏休み」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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