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ミサイルと銅像の夏休み

2017年8月18日(金)

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 年々夏休みが短くなっている気がするのは、夏休みが短縮化しているからではなくて、おそらく私の時間感覚が老化したせいだ。なにしろ、ちょっとあくびをしている間に1週間が過ぎてしまう。そういうカラダになったということだ。

 思い出してみれば、中学生の頃は、「再来週の日曜日」すら、容易にはやってこなかった。「高校生になったら」ぐらいな近未来になると、地平線の彼方に霞んで見えたものだ。

 それが、50歳を過ぎてみると、5年程度の月日は、子供時代の5週間ほどの感覚で過ぎるようになる。

 てなわけで、2週間ぶりに眺める世界は、たいして変わっていない。
 見る人が見れば色々と違って見えるところもあるのだろうが、私の目には、2つの腐った玉ねぎみたいに同じに見える。

 ミサイルは、幸いなことにまだ飛んできていない。

 そういう意味では、世界は変わっていないわけだが、ミサイルが飛んでくる前提でものを考える人たちが増えたことで、おそらく、世界は少しずつ変わりはじめている。どういうことなのかというと、ミサイルは、実際にわれわれの頭上に落下することによってではなく、「いつか自分たちの頭上に落ちてくるかもしれない」と人々に思わせることによって世界を変えるツールだということで、あれは、実に、武器である以上に、われわれのアタマの中身を書き換えるアート作品なのである。

 

 私が夏休みをとっている間に、新しい防衛大臣が赴任して、その、前任者よりはいくぶんもののわかった人間に見える新任の防衛大臣は、早速、北朝鮮を出発したミサイルがグアムに向けたコースを外れて誤って日本に落ちてきた場合を想定して、地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」を中国・四国地方の計4カ所の陸上自衛隊の駐屯地に展開する破壊措置命令を出した。なんでも、金正恩書記長が「警告」している、米領グアム島周辺の海域を狙って発射されるミサイルが、島根、広島、愛媛、高知の各県の上空を通過するであろう想定に対応した措置なのだそうだ(こちら)。

 

 一方、小野寺五典防衛大臣と同じく8月の内閣改造によって新たに赴任した佐藤正久外務副大臣は、北朝鮮発のミサイルが、わが国の上空を通過するかもしれない問題に触れて 「北朝鮮から日本の上空を飛び越えてグアムの方へ(ミサイルが)行く。そういう時、日本の自衛隊は本当に撃ち落とさなくていいのか。日米同盟の真価が問われている。リスクを共有しない同盟はない」と述べている(こちら)。

 佐藤外務副大臣が「撃ち落とす」と言っているのは、小野寺防衛大臣が言っていた「誤って日本に落ちてきた場合」の想定とはまた別の話で、より踏み込んだ対応を物語るものだ。

 彼は、「同盟国を狙っているミサイルは、撃ち落とすべきだ」という意味のことを言っている。

 領空とはいえ、はるか上空の宇宙空間をミサイルが通過することを、わが国が集団的自衛権を発動する要件の一つである「存立危機事態」と認定して良いのかどうかは、議論の分かれる問題だと思う。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「ミサイルと銅像の夏休み」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師