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地獄の先に金メダルは見えるか

2016年8月19日(金)

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 お盆休みはあっという間に過ぎた。
 毎年のことだが、なにもできなかった。
 でもまあ、休むというのは何もしないということなのだろうからして、これはこれで良い。

 ただ、ちょっと残念なのは、本を読むつもりでいた時間のほとんどを、テレビの前で漫然と過ごしてしまったことだ。

 いまとなってみれば、夏休みには本を読もうなどと、中学生みたいな目標を立てていたことが恥ずかしい。ついでに申せば、その目標が達成できなかったことにも、恥辱を感じる。
 で、結局、あれやこれやと文句をつけつつ、だらだらとオリンピックと高校野球を交互に見ている。

 どちらかをやめるべきだと、ある男に指摘された。
 どちらかというのは、高校野球とオリンピックのどちらかを見るなということではない。テレビを見るのをやめるか、ケチをつけるのをやめるのか、どちらかにしろということらしい。

 まあ、おっしゃるとおりではある。
 いやなら見なければ良い。見るなら見るで、グダグダ文句をつけるべきではない。まったくだ。

 が、実際にテレビを見てみると、特に録画で見る競技には、やはりどうしても不満を言いたくなってしまうものなのである。

 責任の半分が、こちらにあることはわかっている。
 つまり、ナマで競技を追いかけている時には気にならない部分が、録画だと神経にさわるわけで、このことの責めは、実況をしているアナウンサーや編集を担当したスタッフよりは、ナマで視聴する時間にきちんと目を覚ましていないわれら視聴者の怠慢に帰するべきだということだ。

 ナマで見ていると、実況アナが大きな声を出しても気にならない。スタート前の準備の段階からドキドキしたり不安になったりしつつ、選手の身になって手に汗握る気持ちで見ている視聴者なら、思わず叫んでしまうアナウンサーの気持ちもわかるし、メダル獲得の瞬間の決め台詞がいくぶんあざとかったり形容過剰に陥っていたのだとしても、同じように興奮して見ている視聴者の気分からすれば、ごく自然に同調できるからだ。逆に、実況アナがあくまでも冷静沈着な態度で中継を続けたら、ナマで見ている視聴者は、むしろ淋しさを感じるかもしれない。

 しかし、朝のニュースの時間帯に、メダルの瞬間の録画VTRを、寝起きのぼんやりしたアタマにいきなりぶつけられることになる午前8時の視聴者は、違う。彼はスタジオの興奮について行けない。

「朝からやかましいなあ」
「うるせえな、メダルが何だっていうんだ」
「いいからわめくなよ」

 と、私は、選手のガッツポーズはともかくとして、その選手の快挙を芝居がかった拍手と歓声で煽り立てるスタジオの人たちの異様なテンションに、毎度毎度ドン引きさせられている。

 スタジオの中で五輪競技のハイライト映像を共同視聴する役割を担いつつ、映像へのリアクションをハンディカメラで狙われ続けているテレビ出演者が、勝利や敗北の瞬間を映し出す映像に対して、自分が本当に感じているよりいくぶんか大げさなリアクションを取ってしまう事情はよくわかる。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「地獄の先に金メダルは見えるか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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