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図書館よ永遠なれ

2017年8月25日(金)

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 スタジアムでサッカーを見る楽しさの半分以上は、サッカーそのものとは別のところにある。

 観戦の醍醐味について述べるなら、ディフェンスラインの駆け引きや、サイドチェンジのパスの軌跡が、スタジアムの座席からでないと真価の見えにくい技巧である一方で、ドリブル突破の際の細かいステップワークや密集の中での選手同士のボディコンタクトの詳細は、テレビ画面を通してでないと把握できない。それゆえ、競技としてのサッカーの全貌をあますところなく堪能するためには、スタジアムでゲームをひと通り見た後に、帰宅後、あらためて録画を確認する必要がある。

 ただ、競技としてのサッカーを観戦することとは別に、スタジアムには、「共同性」の魔法がある。

 別の言い方で言えば、大勢の人間と同じ場所で同じ偶発事件を注視する共同体験の一回性が、半ば群棲動物であるわれわれを陶酔させるということだ。

 同じプレーに歓声をあげ、得点に跳び上がり、パスミスや反則のホイッスルに同じタイミングで嘆息を投げかけるうちに、スタジアムに集った数万人の観衆の間には、いつしか一体感が醸成される。無論、一体感の対偶には相手チームへの敵意が燃え上がっているわけだが、害意であれ仲間意識であれ、集団的な感情である点において遠いものではないわけで、いずれにせよ、同じスタジアムの中で同じ空気を吸っている観客は、徒党であることを楽しんでいる。

 常日頃、集団への同調に苦情を申し述べることの多い私のような人間でさえこのありさまなのだからして、群集心理がもたらす興奮はそれだけ格別な誘惑だということなのだろう。

 群集心理はSNSがもたらす愉悦の主成分でもある。
 何かを応援する時、あるいは誰かを野次る時、われわれは群衆のマナーを身につける。
 そして、群衆となったわれわれは、自分たちが愚かな人間として振る舞うこと自体を楽しむようになる。

 それが、良いとか悪いとかいったことについて話をしたいのではない。
 私は、集団的な娯楽が多かれ少なかれ愚民化の過程を含んでいることを指摘しているだけだ。

 本来は、ひとつの場所に大勢の人間が集まることで、はじめて群衆化への前提条件が整うわけなのだが、そもそもが架空の「場所」であるインターネットでは、人々はあらかじめ集まっている。

 とすると、既に集まっている人間たちが群衆化するためには、ひとつの話題なり目的なりを共有すればそれで足りることになる。

 はるか昔の話だが、学校の近くに下宿している学生のアパートに集まってテレビを見るような時、共同視聴の対象は、出来の悪い番組であるほど面白かったことを覚えている。

 というのも、5人とか8人みたいな人数で1つのテレビの前に群がっている行き場のない学生が粗末なブラウン管の中に期待していたのは、心踊る物語や卓抜な演技ではなくて、どちらかといえば寄ってたかっておもちゃにできる間抜けな「ツッコミどころ」だったからだ。

 であるから、たとえば、稚拙な演技と陳腐な演出と月並みな台詞が盛大に散りばめられている、そしてそれ故に大人気となったドラマである「スチュワーデス物語」あたりは、退屈した学生にとって最適なコンテンツだった。なんとなれば、われわれは、ドラマの内容でなく、自分たちが発する罵声と嘲笑を娯楽として楽しんでいたからだ。

 ほぼ同じことが、現代のSNSでも起こっている。

コメント64件コメント/レビュー

「何度読んでも「どこがどう間違っているかを指摘」されていないんだがw」
簡単です。学校で教わった歴史は、すべてプロパガンダであり、真実ではない。
それに洗脳された人間の考えることは、すべて間違った方向に向くのである。
戦前に生まれてもいないのに、どうやって戦前の思想に洗脳されるのだろうか?
そもそも、そういう文献はGHQにより焚書されている。そういう事実も知らないのだろう。(2017/09/12 12:22)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「図書館よ永遠なれ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「何度読んでも「どこがどう間違っているかを指摘」されていないんだがw」
簡単です。学校で教わった歴史は、すべてプロパガンダであり、真実ではない。
それに洗脳された人間の考えることは、すべて間違った方向に向くのである。
戦前に生まれてもいないのに、どうやって戦前の思想に洗脳されるのだろうか?
そもそも、そういう文献はGHQにより焚書されている。そういう事実も知らないのだろう。(2017/09/12 12:22)

その本を作った労力にちゃんと対価を支払いたいし、好きな著者さんが書き続けられるよう応援も兼ねてできるだけ買いたい。でもお金もスペースも限られてて全部は難しいし、つまらない本なら買いたくないのも本音だし、「まずは図書館で読んでみる」という選択肢のおかげで出会えた著者、作品もある。書籍の作る側の方が図書館に否定的だと切ないです。それで生計を立てていると過敏にならざるを得ないのもわかるので「切ない」以上のことは言えませんが...

たしか作家の久美沙織さんがおっしゃっていたのですが、図書館での貸出実績に応じて印税が入ればいいのになぁ、と思います。海外ではそういうシステムになっているとか。うろ覚えですが。(2017/09/07 15:28)

本が売れないのは図書館の責任ではない。
日本人が劣化してその結果本を読まなくなったのである。
このままいけば日本は沈没だ。(2017/09/04 15:59)

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