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ダブルバインド、それもひとつの選択肢

2016年11月18日(金)

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 「駆けつけ警護」という言葉が気になっている。

 最初に聞いたのがいつだったのかについて、正確な記憶はもはや残っていないのだが、とにかく、はじめてこの言葉を耳にして以来、ずっとモヤモヤした気持ちをかかえている。

 なぜ気になっているのかというと、日本語として明らかに「変」だからだ。

 虚心に「駆けつけ警護」という一組の術語を聞いて、普通の日本人が考えるのは、
「駆けつけない警護があるのか?」
 ということだ。

 ん? 考えない?
 なるほど。

 まあ、たしかに、いちいちこういう突っかかり方をする私のような男は、あるいはひねくれた日本人というべきで、普通の日本人は特に大きな違和感を抱かないものなのかもしれない。
 でも、私はモヤモヤするのだな。

「駆けつけ警護……ってことは、その裏側に駆けつけない警護みたいなものを想定しているわけなのか?」

 と、私は第一感で、そういうリアクションをする。
 私だけではない。私の周囲には同じ反応を示す似たようなおっさんがとぐろを巻いている。

「駆けつけるからこそ警護になるわけだよな?」
「っていうか、そもそも警護というのは駆けつけることを前提に成立する動作なんじゃないのか?」
「だよな。してみると、遠隔警護とか、エア警護みたいなものが別立てであるというのならともかく、警護に行くのに、わざわざ『駆けつけ』を強調する用語法は、日本語として異様としか言いようがないぞ」
「そのデンで行くと、普通の勤務も出勤勤務ってなことになる」
「昼飯ひとつ食うにしても入店食餌摂取式の言い方が要請されるだろうな」
「原稿だって単に執筆するんじゃなくてiMac電源投入エディタ立ち上げ執筆ぐらいには吹かしておかないと先方へのシメシが付かなくなる」

 同じような疑問を抱いた読者が多かったからなのかどうか、朝日新聞は、この言葉について、11月16日の朝刊で、記事とは別枠の「キーワード」の欄で、解説を付加している。

《現地の国連司令部の要請などを受け、離れた場所で武装勢力に襲われた国連職員やNGO職員、他国軍の兵士らを助けに向かう任務。実施するかどうかは、自衛隊の派遣部隊長が要請内容を踏まえて判断する。警護対象を守る際には、武器を使う可能性もある。》

 この解説で、おおまかな意味はわかるといえばわかる。
 要するに、PKO(国連平和維持活動)で派遣されている自衛隊が、同僚や友軍が攻撃に晒された時に、敵の攻撃から味方を守るために援護に駆けつける任務を指してこう呼ぶということなのであろう。

 とはいえ、「駆けつけ」「警護」という言葉の軽さは、この定義からだけでは説明がつかない。
 自衛隊の任務に「警護」という、軍隊の匂いのしないガードマンっぽい言葉をあえて使っている理由もはっきりしない。

 で、引き続き「知恵蔵2015」の解説記事を読んでみると、なるほど、なかなか含蓄のある言葉が書かれている。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「ダブルバインド、それもひとつの選択肢」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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