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「売り言葉に買い言葉」に閣議決定が要るか?

2016年11月25日(金)

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 差別の問題は、簡単ではない。

 誰かが特定の言葉を発したことをもって、ただちに差別と断定できるのかというと、必ずしもそうは言えない。

 文脈によって、あるいは、その言葉を使った人間と使われた人間の関係によって、言葉の持つ意味は、いつでも、微妙に変化するものだからだ。
 当然、差別の有無についての判断も、ケースバイケースで、その都度、個別に、その言葉が使われた特定の文脈とワンセットの事案として評価されなければならない。

 

 ここまでは良い。
 私自身、画一的な基準で強要されるいわゆる「言葉狩り」には、反発を感じることが多い。

 つい先日のアメリカの大統領選挙でも、トランプ氏を勝利させることになった要因のひとつには、前世紀以来アメリカ社会を席巻してきた「ポリティカル・コレクトネス」に対する、合衆国国民の反発があったと言われている。

 つまり、洋の東西を問わず、誰かの言葉尻をとらえてそれを大勢でよってたかって批判するみたいな風潮にうんざりしている人はそれなりにたくさんいるということだ。

 ただ、たとえば「土人」という言葉は、どの場面で、どういう人間が、どんな立場の人間に対して使ったのであれ、差別を含んでいると考えるのが普通だ。逆に言えば、「土人」は、差別的でない使い方を想定しにくい言葉だということでもある。

 まして、機動隊の人間が、沖縄で空港建設反対のために集まった市民に対して「土人」と言ったのであれば、これを「差別ではない」というふうに擁護することは、ほとんど不可能に近い。

 ところが、驚くべきことに、ほかならぬわたくしどもの政府は、その困難な仕事を貫徹しようとしている。
 つい3日ほど前、

 沖縄県の米軍施設建設現場付近で機動隊員が抗議活動をしている人に「土人」と叫んだことを鶴保庸介・沖縄北方相が「差別と断定できない」と述べたことについて、政府は鶴保氏の訂正や謝罪は不要とする答弁書を閣議決定した。(中略)

 答弁書は、土人という言葉に「未開の土着人」との軽侮の意のほか、「その土地に生まれ住む人」などの意味もあり、差別用語にあたるかどうか「一義的に述べることは困難」と説明。訂正や謝罪が不要と判断した理由として、鶴保氏が機動隊員が土人と叫んだこと自体を「許すまじきこと」とし、「沖縄県民の感情を傷つけたという事実があるならば襟を正していかなければならない」との趣旨の発言をしたことを挙げた。

(記事はこちら

 ということがあった。
 なんと、彼らはこれを閣議決定している。

 沖縄県民に向けて、機動隊員が発したとされる「土人」という言葉を、「差別と断定できない」とした鶴保大臣の言葉が「謝罪も訂正も不要」である旨を、この国の政府は、わざわざ閣議を開いて確認したうえで、内外に公式に発表したのである。

 驚天動地の答弁書だと思う。
 いったいこの国の政府の内部で、何が起こっているのだろうか。
 どんなことが起これば、こんなに奇天烈な答弁書が閣議決定されるような空気が醸成されるのだろう。
 実に興味深い。

 経緯をざっと振り返っておく。
 去る10月18日、沖縄県の東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設予定地で、施設の建設に抗議するために集まっている市民に対して、機動隊員が
 「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」
 と発言したことが一斉に報じられた。なお、同じ現場では、別の機動隊員が
 「黙れ、こら、シナ人」
 と発言した。

 で、翌日には、このことを伝える記事が一斉に配信され、発言を記録した動画がネット上にアップされている。

 この発言そのものについて言うなら、私は、大筋「売り言葉に買い言葉」だったと思っている。

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「「売り言葉に買い言葉」に閣議決定が要るか?」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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