• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

目に見えないものに幸いあれ

2015年12月4日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 漫画家の水木しげるさんが亡くなられた。

 はじめにお断りしておくが、私は、水木マンガの熱心な読者ではない。それ以前に、マンガというジャンル全般に対して、不案内でもある。

 同世代の出版業界人の標準からすれば、「あきれるほどマンガを読んでいない人間」に分類されるはずだ。

 なので、この分野にはなるべく口を出さないようにつとめてきた。
 これまでに何度か思いつきを口走って痛い目を見ている。

 なんというのか、マンガに詳しい人たちから見ると、読み齧りの素人がいきなりきいたふうな口をきくことは、しみじみと腹の立つ出来事であるようなのだ。気持はわからなくもない。おそらく、問題は、私の論評が当たっているかどうかではなくて、冒頭の3ページぐらいのところを読んで、いきなり感想を述べはじめる軽薄さがしゃくにさわるのだと思う。

「火の鳥ってさ」
「お前、全巻読んだのか?」
「ん? 全巻って、そんなに何冊もあったっけ?」
「ナニ篇の話をしてる?」
「なんとか篇とかは覚えてないけど、ほら、猿田彦とかが出てくるじゃん。御茶ノ水博士の顔で」
「もういい。わかったから黙れ」
 わかった。論評は控える。

 追悼も、実はちょっと述べにくい。

「お前なんかに水木先生を追悼する資格があるのか」

 と決めつけられた場合に、返す言葉が見つけにくいからだ。

 この気持には覚えがある。
 高校二年生の時、隣の隣のクラスの生徒が自殺した。
 で、そのG組のT君が座っていた机にはなんだかんだで1カ月ぐらい花が飾られていた。
 その花に腹を立てている生徒が、私の友人だった。

「女の子たちはけっこう涙流してたけど、なんで泣くんだ?」
「泣くぐらいかまわないだろ。クラスメートが死んだんだから」
「でも、あいつとは誰も口をきいたことなんかないんだぞ。なのに、なんでいまさら友だちでしたみたいな顔して泣いたりできるんだ?」
「いいじゃないか。級友の死に涙する自分が好きだから泣くとか、ありそうな話じゃないか」
「オレは迷惑だよ。花とかいいかげんにしてほしい」

コメント32

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「目に見えないものに幸いあれ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック