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カジノ法案という“増税策”

2016年12月9日(金)

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 カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案(カジノ法案)が、12月6日の衆議院本会議で可決され、7日から参議院で審議入りした。

 衆議院での審議時間は、わずか6時間足らずだった。
 この点(審議の時間が十分でなかったこと)について

「国会軽視だ」
「審議不足だ」

 という批判の声があがっている。

 国会を言論の府であるとする建前からすれば、もっともな批判だ。
 とはいえ、与党が3分の2以上の議席を占め、与党外からも賛成にまわる勢力(維新の会)が合流している以上、どんな手順で議論を進めたところで、採決の結果は動かない。与党側が、審議を尽くしたという外形を整えるために、それなりの審議時間を費やしたのだとしても、結果として法案が変更なしに可決されるのであれば、実質的に何が変わるわけでもない。

 つまるところ、われら有権者が、政権与党に単独で議決可能な数をはるかに上回る議席を与えている以上、いま起きていることは、与党側の自由裁量権の範囲内のお話だ。別の言い方をすれば、現今の国会の状況は、先の選挙において、わたくしども選挙民が、与党側に対して「強引な手法で審議を省略して採決に持ち込んでもかまわない」というお墨付きを与えたことの、必然的な帰結なのだ。

 そんなわけなので、私個人としては、採決について、いまさらどうこう言おうとは思っていない。
 議席を持っている勢力が、議席数に相応する権力を振り回すのは、制度上、仕方の無いことだ。

 ただ、法案成立に至る過程が正当であるのかどうかということとは別に、現在審議されている法案の中味に関しては、私なりに色々と思うところがある。今回はそれを書いておくことにする。

 私が賛成しようが反対しようが、それが、法案の内容や成立時期に影響するわけではないことはよくわかっている。それでも、現在、自分のアタマの中にある考えを書いておくことには、一定の意味があると思っている。というのも、たとえば10年後に、この法律がこの国の姿を変えている時点から振り返って読み返してみれば、これから私が書くことは、それなりの意味を持っているはずだからだ。

 いまのうちに書いておけば、あとになって
「ほら、オレの言っていた通りじゃないか」
 と言うことができる。

 その10年後の繰り言に説得力を与えるために、いまから布石を打っておくということだ。

 私がカジノ解禁法案に反対する主たる理由は、この法案が、「統合型リゾート(IR)整備推進法案」というその名称が示唆している通り、賭博のもたらす弊害から目をそらして、賭博が生み出すであろう利益と権益だけを手に入れようとする人々が立案した絵空事であるように見えるからだ。

 「統合型リゾート」という名称は、その中核がカジノである点を意図的に隠蔽(でなければ黙殺)した言い方に聞こえる。

 「統合型」という言葉だけでは、何と何を統合するのかがはっきりしない。
 が、実質的にそれは「飲む」「打つ」となにやらの統合になるはずだ。

 ヘタをすれば、もっとヤバいものを含んだ「なんでもアリ」の「インテグレート」になる可能性をはらんでいる。

 その種の、これまでわが国には存在していなかった大掛かりな「悪場所」を新設するために、私たちの国会は、あえて法律を変えてまで環境を整えようとしている。

 30年前の日本であれば、こんな法律が国会を通過することはあり得なかった。
 というよりも、検討すらされなかったはずだ。

 というのも、わが国の経済が成長過程にあり、国民と企業が、自分たちの国の成長と繁栄を信じていた時代なら、賭博場のもたらすであろう利益や海外の賭博系企業による資本投下をあてにするまでもなく、自分たちの自前の力で遊休地の開発を立案し、独自に投資を募って、新しいプランを実行することができたに違いないからだ。

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「カジノ法案という“増税策”」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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