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クラッシャー上司が「社員は家族」を好む理由

『クラッシャー上司』著者・松崎一葉さん×河合 薫 特別対談(3)

2017年3月29日(水)

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 話題の新書『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』(PHP新書)。部下を精神的に潰しながらどんどん出世していくパワハラ上司の事例が次々と登場し、「うちの会社にもいる」と思わせる「いるいる感」に引き込まれて読み進むことになる。

 著者の松崎一葉さんは、筑波大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループ教授で、産業医でもある。クラッシャー上司の話はちょっと怖いけど、「松崎先生には会いたい」との河合薫さんの熱望で実現した二人の対談。

 松崎さんは、日本企業の経営トップがよく使う「社員は家族」という言葉に潜む危うさを指摘する。一体、どういうことなのか?

(編集部)

(前回「窮地のクラッシャー上司は、あの言葉を繰り返す」から読む)

一家主義による同調圧力から「クラッシャー上司」が生まれる

松崎 一葉(まつざき・いちよう)さん
筑波大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループ教授。1960年茨城県生まれ。1989年筑波大学大学院博士課程修了。医学博士。産業精神医学・宇宙航空精神医学が専門。官公庁、上場企業から中小企業まで、数多くの組織で精神科産業医として活躍。またJAXA客員研究員として、宇宙飛行士の資質と長期閉鎖空間でのサポートについても研究している。「クラッシャー上司」の命名者の一人。

河合:奥さんに逃げられてうつ病になってしまったり、帰国子女に逆クラッシュされたり。「クラッシャー上司」って意外と打たれ弱いんですね。

松崎:一丸となって一つの価値観の下でやっていかないとダメだって、思っているから。逆に言えば、その考え方があるからこそ、部下を潰してしまうような自分の言動を正当化できる。

河合:私、日本に帰ってきていちばんしんどかったのが、その「みんなと一緒」を良しとする空気です。みんなと同じがいちばん、という。

松崎:つまり、一家なんですよ。「河合組だろ」みたいな。

河合:めちゃくちゃ日本的。日本企業のトップがよく口にする「社員は家族」もソレですよね。自分が社員を大切にしていることを訴えるときの常套句ですよね。

松崎:そのとおりです。一家主義が生むのは、同調圧力なんですよね。僕が「こうだ」といえば下は従うしかない。同一の価値観です。大学の研究室にも一家主義的なものがあるし、日本の企業の経営者って、一丸となってやっていかないとダメだ、といった呪縛から離れられないケースが多いですね。

河合:呪縛なんですか?

松崎:うん、呪縛。僕にもね、そういうところがあった。ところが昨年、博士課程に外国人の女性が入ってきたら、僕が変わってしまった…。

河合:イケイケ教授だったのが、いきなり好々爺になってしまったとか?(笑)

松崎:近いですね~(苦笑)。なんかね、医局会での一家主義的「こうしようぜ!」発言が、激減してしまったんです。「彼女は日本人じゃないから、こんなやり方には戸惑うだろう」って思っちゃって。

河合:誰かから指摘されたわけでもないのに、先生ご自身で?

松崎:そうです。それまでは一致団結することが、最優先事項だと思っていたわけです。でも、一致団結はあくまでも結果であって、それを目的にして締め付けを強めたりしては本末転倒です。

 やっぱりダイバーシティって、必要なんだなぁって痛感しましたよ。だって、外国人の学生がたったひとり入っただけで、僕の「こうしようぜ!」発言がなくなるんです。外国人が加わることが外圧となって、日本人特有の同調圧力や単一の価値観が否応なしに壊れていくんです。

河合:逆にそれを脅威に感じる人もいるんじゃないでしょうか。「オレたちのやり方、変えるなよ」みたいな。

松崎:それ、河合さんがメルマガでよく書いている「ジジイの壁」ですか?

河合:はい。ジジイの壁は厚いですよ~(笑)。点じゃなく、面ですから。

 “ジジイ”というのは、会社のためといいながら自分の保身だけに生きている人たち。だからオバさんでもジジイはいるし、若くしてジジイになる人もいます。口癖は「前例がない」とか、「そんなことをやって責任を取れるのか」とか。自分たちのやり方が変わるのを、徹底的に嫌うんです。

松崎:そして、ジジイの壁の向こう側にへ行っちゃう。体の中が壁の向こう側に行っても、大所高所からの判断がきちっとできればいいですけど、そういう見識も持たない人たちは多いですよね。

河合:だから同調圧力が生んだ「俺のルール」を壊すのって、メチャクチャ大変だと思うんです。外圧が女性なら「スカートを履いたオッサン」になるか、そこから退散するか、どちらしかない。

松崎:そうやって組織って末期に向かって行くんですよ。

河合:中途半端にアメリカ産の成果主義とか輸入しちゃったのが、問題なんですよ。バブルが崩壊して自分たちのやり方が行き詰まったからって、「アメリカ=世界基準だから」みたいな感じで安易にマネた。

 そもそも文化も違うし、国民性も違う。そりゃあ、副作用も大きくなりますよね。年下の男性が上司になるのはギリギリ我慢できても、年下の女性が上司になるのは許せない。

コメント21件コメント/レビュー

「クラッシャー上司って原発みたい」のご意見に同意します。私が配属された場所で、前任者が上司との関係からメンタルが壊れて退職した、しかも3人連続、ということを他部署の人から聞きました。ということは、3年勤められている私は「原発が隣にあっても大丈夫ですよ」っていう人みたいです。はじめ2年くらいまでは「ただちに健康に影響はない」だったけど、最近は線量が蓄積しているように思います(泣)。でもその上司は、属人的な仕事が多く、異動させるには相応のスキルがある人と引き継ぎ期間がいりそうです。いつか除染される日が来ることを希望します。(2017/04/01 11:35)

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「クラッシャー上司が「社員は家族」を好む理由」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

「クラッシャー上司って原発みたい」のご意見に同意します。私が配属された場所で、前任者が上司との関係からメンタルが壊れて退職した、しかも3人連続、ということを他部署の人から聞きました。ということは、3年勤められている私は「原発が隣にあっても大丈夫ですよ」っていう人みたいです。はじめ2年くらいまでは「ただちに健康に影響はない」だったけど、最近は線量が蓄積しているように思います(泣)。でもその上司は、属人的な仕事が多く、異動させるには相応のスキルがある人と引き継ぎ期間がいりそうです。いつか除染される日が来ることを希望します。(2017/04/01 11:35)

毎度否定しないと気がすまないひとが多いですね。西洋対日本でどっちが優秀かじゃないでしょう。物事にはいろいろな側面がある、というか物事そのものには事実とか性質とかしかなくて、どんな立場や評価軸で見るかで価値は違ってくるので、具体的な状況抜きに良いも悪いもない。そういうちゃんとした認識ができれば今回のお話も「見識が広がった」と思えるでしょうし、会社でも社会でも要は関係者が出来るだけ幸せになること不幸にならないことを重要視してやり方を選択すればいいだけです。そもそも物事を自分と他者との対決でしか見られない人は「じここーてーかん」が低すぎる。そのせいで本当の意味で自分も他人も仕事も何も大事にできない。(2017/03/30 23:24)

記事の本筋ではありませんが。
>“ジジイ”というのは、会社のためといいながら自分の保身だけに生きている人たち。
>だからオバさんでもジジイはいるし、若くしてジジイになる人もいます。
特定の性別・年齢という属性を持つ人に、それと無関係のレッテル貼りを行うことを
差別というのではないでしょうか。
ダイバーシティとは全ての人を尊重するものだと思っていましたが、河合さんたちの言う
ソレでは中年以降の男性は対象になっていないのかな?
このコメントが忖度されて掲載されないようなことがないように願います。(2017/03/30 14:13)

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