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「人を傷つけずにいられない」組織的パワハラ

「週35時間労働」でも、人は過労で自殺する

2017年5月9日(火)

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 フランスの大統領選挙は大方の予想どおり、エマニュエル・マクロン氏が大勝した。

 日本では「反EU vs 親EU」「反移民・難民 vs 親移民・難民」という話題ばかりが取り上げられていたけど、現地フランスではもうひとつ話題になっていた“問題”がある。

 「週35時間労働制」。これを維持するか、撤廃するか(週39時間制に戻す)、だ。

 

 ちなみにルペン氏は維持派、マクロン氏は撤廃派で「週35時間労働制の若年層での廃止と柔軟化」を政策に掲げていた。

 

 え? 週35時間労働制?? 残業じゃなく、純粋な労働時間?

 

 はい。そのとおりです。1週間の労働時間を35時間とし、それ以上働かせた場合、企業は25~50%時給を上乗せする必要がある(※労使交渉で割増率を10%にすることは可能。1998年から「週35時間労働制」は段階的に進められ、2000年からは従業員21人以上の規模の事業所を対象に、2002年には20人以下の事業所も加え法制化した)

 1990年代に左派政権によって「週35時間労働制」は導入され、その主たる目的は、雇用の維持と失業者対策だった。しかしながら、1人当たりの労働時間を削減して雇用を増やす「ワークシェアリング」という言葉を使わなかったのは、フランス人ならではの「生き方」へのこだわりがある。

週35時間労働で、生活の質は改善したが…

「労働者である以前に人間である」──。
という歴史的・哲学的思想の下、失われつつある社会性や連帯の再構築、“自由”という人間性の回復のためにも、労働時間の削減は必要と判断されたのだ。

 政府の目論見通り、2000年~2002年にフランス全土で実施された大規模調査では、5割が「職場の人員が増えた」とし、6割超が「生活の質が向上した」と回答(失業率の改善には好景気が影響した、という意見も多い)。

 また、残業時間は有給にすることも可能なので、2週間に1回は3連休になる人も増え、「会議なし、アポなし金曜日」というフレーズも生まれた。とりわけ12歳以下の子を持つ親には35時間労働は好評で、半数以上が「子どもと過ごす時間が増えた」とするなど、生活に余裕ができたことが確認されている。

 ところが、である。いかなる施策も、“使い方”次第なのは万国共通。

 「労働者の健康と生活」を重視するフランスでも、人間性を無視し「競争力」や「コスト」などの言葉で労働者を語る経営者が存在し、仕事量は従来どおりで労働時間だけを短縮、賃金を抑制したのである。

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「「人を傷つけずにいられない」組織的パワハラ」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授