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上司の虐待を擁護するニッポンの闇

指導とパワハラの境界線はどこだ

2017年7月11日(火)

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 パワハラに関する報道が、相次いでいる。

 豊田真由子衆院議員の“暴言劇場”はあまりにも衝撃的だったが、今度は創業100年の老舗農業機器メーカーで、前社長のパワハラによって30人以上の社員が辞めていたことが報じられた(以下、ソースはこちらなど)。

 問題になった前社長は、創業家出身の4代目だ。

 「おまえなんか死ね」
 「生きている意味がない」
 「アホか、ぶっ飛ばすぞ」
 「オマエなんかいらない」
 「こんな親に育てられる子どもはかわいそうだ。ろくな人間にならない」

 などなど、2006年に社長に就任して以来、社員たちは「毎日、パワハラに耐え、パワハラから逃れる日々だった」という。

 同社長の愚行はセクハラにも及び、入社面接で「性交渉したことがあるのか?」「彼氏がいるのか?」と聞いたり、複数の女性新入社員と女性社員用の寮で共同生活するなどやりたい放題。

 ……なんということだ。尋常ではない。

 「バカかお前は! 死ね! 生きている価値ないだろう」(by 豊田議員)――。ふむ。全く同じだ。

 なぜ、こんな明らかに「アウト!」という行為が繰り返され、放置されるのか?
 豊田議員の一件では、「録音するのってどうよ?」と秘書の行為を非難する人が少なからずいた。

「暴言は言わせる方にも問題がある」という意見

 しかも、これが“運転手のミス”のあとのやり取りだったことが報じられると、
 「運転手がミスしたからでしょ? 指導とパワハラの境界線って難しいよね~」
 と、テレビのコメンテーターたちは顔をしかめ、細田博之自民党総務会長に至っては、
 「高速道路の逆走が原因」
 とわざわざ説明し、ワイドショーでは
 「逆走はあったのか? なかったのか?」
 なんて不毛な議論が繰り返される始末だ。
 「あんな男の代議士なんかいっぱいいる。(豊田代議士を責めるのは)かわいそうだ」
 と、自民党の河村建夫元官房長官が述べ、あわてて撤回したあとでさえ、
 「政治家ではめずらしいことではない」
 と“暴言を擁護”する政治評論家もいた。  

 私はこういった「暴言・暴行」に一定の理解を示そうとする人々に、一抹の薄気味悪さを感じている。

 秘書が100人近く辞め、“ピンクモンスター”とまで呼ばれながらも放置された豊田議員。今年2月の取締役会で解任されるまで10年間もトップに居続けたられた4代目社長。こうした人たちがボスの椅子に座り続けることができたのも、ひょっとするとこういった“擁護派”の存在が関係していたのかも、などと思ったりもする。

 彼らはたいてい、昔の理不尽な上司部下関係を美化し、
 「昔は、上司からの暴力なんて日常茶飯事」だの、
 「何度も蹴りを入れられたけど、ある意味ああいう行為って、愛情表現だし」だのと、
 「あの頃は良かった」と懐かしそうに振り返る人たちである。

 ………だからパワハラがなくならないんだな、きっと。と暗澹たる気持ちになる。

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「上司の虐待を擁護するニッポンの闇」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師