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「生きる……」 親が子に見せた愚直な欲求の覚悟

子どもがオトナになる瞬間

2015年7月22日(水)

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 「めちゃくちゃ元気だった父が、ちょっと具合が悪いと病院に行ったら、すい臓癌が見つかって。既に十二指腸と肝臓に転移。余命3カ月と言われたのが昨年の暮れです。結局、頑張って7カ月もちました。でも、この7カ月間で、私は父にいろいろなことを教えてもらった。親っていうのは最後の最後まで、ホント死ぬまで、子どもに大切なことを教えてくれるんですね」

 こう語り出したのはフリーランスで働く、40代の女性である。
多くの同級生たちがそうであるように、彼女もまた、“親の変化”に昨年末に直面した。

 子どものときは親が必死にいろいろと教えても、それが“親の教え”であることが分からない。ところが、オトナになり、親と向き合うと見えてくるものがある。

 病い、老い。そして、人が人である限り避けて通れない“死”は、人間にとって一番の恐怖であり、危機であり、困難であり、ストレスである。その死へのカウントダウンが始まったとき、親は子に全力で“大切なこと”を教えてようとしてくれるのかもしれない。

 「よく最後は、気力だとか、気持ちだとかいうでしょ? そのためには目標が必要だって。私もそう思って父と接してきた。でも、そのどれもが、私が思っていたようなカタチではなかった。そのなんていうか、モチベーションの正体っていうのかな。それを父が教えてくれたように思っています」

 やる気、目標、モチベーション…。生きていくうえでも、働いていくうえでも、上司にとって、組織にとっても常に課題となる心の動き。特に、企業に依存する生き方・働き方の賞味期限がとっくに切れた現代社会では、ワーク・モチベーションをいかに高めるかで、人生の充足感が変わるといっても過言ではない。

 そこで今回は、「モチベーションの正体」について、アレコレ考えてみようと思う。

 「本当に突然の出来事で。まさか父が癌になるなんて考えたこともなかった。でも、あっという間に体力面もメンタル面も変わり果ててしまいました。最初に入院したときなんて、わずか1週間足らずで小さくなっちゃって。

 コミュニケーションを取るにも、“パパ”って耳の近くで声をかけてからじゃないとダメ。それまでの父は私が学生のときのまんまで。その父の老いを目の当たりにして、なんだか切なくて。最初の頃は病気のこと以上に、急速に老いていく父を受け止めるのがしんどかった」

 「あるとき、父の背中を拭いてあげようとパジャマをめくったら、驚くほど小さくなっていて。ビックリして涙が出ちゃった。癌が進行していたからか、入院して1週間足らずで急激に体重が減っちゃったんです。でもその背中見てたら、“生きるのは大変なんだぞ。頑張れ!”って言われているような気がしてね。そう、頑張って生きろって。

 父のことがあってから、やたらと街で出会う高齢者の方に目が向くようになったんですが、みんな杖ついたり、止まり止まりしながらも、必死で歩いてるでしょ? みんな必死で生きてる。生きてるってホントはものすごく大変なことなんだなって思うようになりました」

 「父に大きな変化が起きたのは、2回目の入院です。体内に留置していたステント(癌が大きくなり塞いだ胆管を広げるために入れるステンレスの管)が落下し、危篤状態になってしまったんです。

 父は、11月に癌が見つかった後、年末には退院。年明けからは、外来で抗癌剤治療を受けていました。抗癌剤が効いて少し腫瘍が小さくなった。その結果ステントが落下。そのときに胃の動脈を傷つけ、大量出血した。

 命は取り留めたものの、3リットル以上の輸血をしたので、激しい貧血で1週間以上意識がもうろうとする状態が続きました。メンタルも体力も著しく低下し、トイレに立つことさえできなくなった」

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「「生きる……」 親が子に見せた愚直な欲求の覚悟」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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