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「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日

ホワイトカラー・エグゼンプションという“感情論”

2017年8月1日(火)

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 今回は「感情と論理」について考えてみる。
 「論理的」に見える人が実は感情に突き動かされている、これ、そんな事例じゃないかというお話だ。

 「高度プロフェッショナル制度」、別名「ホワイトカラー・エグゼンプション」、またの名を「残業代ゼロ法案」が、ついに秋の臨時国会で働き方改革関連法案と一括して提出されることになった。

 容認する姿勢を見せていた連合は“集中砲火”を浴び、政労使合意を見送るとのこと。

 第1次安倍政権の時から、要件を変え、名前を変え、手を尽くしてきた政府は、
 「労働者団体の代表の意見を重く受け止め、責任をもって検討する」(by 菅義偉官房長官)
 そうだ。

 思い起こせば、今から10年前……

 「残業代が出ないんだから、早く帰れるし、家族団らんが増え、少子化問題も解決するじゃん!」(安倍首相)。

 「そうだ!そうだ!『家族だんらん法』と呼ぶように、徹底しよう!」(当時の厚生労働大臣 舛添要一氏)

 「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんよ! これは自己管理です! ボクシングの選手と一緒です。つらいなら、休みたいと主張すればいい」(某女性起業家)

 などと、今だったら大問題になりそうな“ノー天気”な発言がありましたね。

 はい。そうです。これらはすべて、第1次安倍政権の時に記者会見などであった発言である。
 あ、失礼。実際の言い方はこんな“軽~い”感じではなく、もっと“丁寧”な物言いです。

ノリと勢いで導入しようとしてないか?

 しかしながら、こんな風に脚色したくなるほどどの発言も根拠に乏しい。当時から、この制度の議論は「ノリと勢い」だけで進められてきた感が否めないのである。

 いずれにせよ、ご存知のとおり第1次安倍政権のときに、世間から総スカンされ一旦は頓挫。で、第2次安倍政権で、またしても産業競争力会議の提案というカタチでスタートした。

 その推進役を担った、長谷川閑史(はせがわ・やすちか)氏(前経済同友会代表幹事、武田薬品工業会長)は、2014年の朝日新聞のインタビューで次のように語っている(2014年5月22日朝刊 一部抜粋)

(記者)長時間労働を招くとの懸念が相次いでいます。

「労使合意もあるし、最終的には本人の判断。うまくいかなければ、元の働き方に戻れる仕組みだ。(働き手を酷使する)『ブラック企業』が悪用するとの批判もあるが、まずは労働者の権利をしっかり守れる企業にだけ認めればいい」(長谷川)

(記者)働き手が「同意」を強いられませんか。

「そうならないよう守るのが労組の役割のはず。労働基準監督署もしっかり見ないといけない」(長谷川)

 ふむ。当時もこのインタビューにはかなり驚いたけど、今改めて読み返しても突っ込みどころ満載である。

 「労働者の権利をしっかり守れる企業だけに認めればいい」って??
 「労働者の権利をしっかり守っている企業です!」というのは、誰が決めるのか?
 「わが社は、労働者の権利なんて守ってませ~~ン!」などと、胸を張る企業がいたら、それこそ問題である。

 「そうならないよう守るのが労組の役割のはず」って?
 労組のトップである連合からしてその任を果たせるとは、私にはどうにも思えない。

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河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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