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「働き方改革」が描く、自立の名の下の弱者排除

「自立」と「成果主義」で残業が減るという不可解なロジック

2016年8月9日(火)

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 加藤勝信一億総活躍・働き方改革担当相が、誕生した。

 もし、就任の記者会見で、

「手始めに、夏季休暇2週間を義務づけます! え? はい、そうですよ! この夏に、です。気象庁の分類では、7、8、9と、9月までが夏となっていますので、9月を含めて交代で休んでください!」

なんてことを言ってくれれば、加藤大臣株は急上昇したに違いない。

「え? 無理? いやいや、あのときだってみなさん、できたじゃないですか。そうですよ。2011年の東日本大震災のときです。

 不要不急の仕事、つまり、重要でも急ぎでもない仕事の場合、会社に来なくていいって、会社から自宅待機の指示を受けた方たち多かったですよね?

 博報堂、電通、ソニー、富士フイルム、鹿島、武田薬品工業、楽天、ノエビアなどなど、名だたる大企業が、続々と「自宅待機」や「出社見合わせ」を命じていましたよね。

 え? 『来るな』って言われたのに、行ってしまったって? ああ、ダメです、ダメです。我が内閣は、本気で長時間労働是正に取り組みますので。その手始めとして、世界でダントツに低い有給休暇消化率の改善から始めます!

 我々は本気です。経営者のみなさん、『一人ひとりが輝くため』なんですから、どうぞよろしくお願いします!」

 もし、こんな具合に少々強引でも、多少反発を食らおうとも言ってくれれば、内閣改造後の酷暑も気にならなかったかもしれない。

 が、現実は、「げっ、マジ?」という方向に進みそうな事態になっている。

 そこで今回は、「働き方改革の行方」について、アレコレ考えてみる。

長時間労働も非正規もなくなる「働き方の未来」

 働き方改革大臣が誕生した、その前日のこと。厚生労働省のHPに、私たちの「未来予想図」となる報告書が掲載された。

 タイトルは、「『働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために』懇談会 報告書」。

 従来の枠組みにとらわれずに20年先を見据えて「働き方」についての議論を目的に、今年1月に発足した厚労省の「働き方の未来2035」懇談会の政策提言書である。

 この内容を読むと、第3次安倍再改造内閣の発足時に安倍首相が述べた、文言の真意を理解することができる。

「党内きっての政策通、重厚な経済閣僚をそろえて、成長戦略を一気に加速してまいります。目指すは戦後最大のGDP600兆円。さらには、希望出生率1.8、介護離職ゼロ。この3つの『的』に向かって『一億総活躍』の旗を一層高く掲げ、安倍内閣は『未来』への挑戦を続けていきます。

 その最大のチャレンジは、『働き方改革』であります。長時間労働を是正します。同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉をこの国から一掃します」

長時間労働が、本当になくなるのか?
非正規という言葉が、本当に一掃されるのか?

 その答えが、「自立」という見栄えのよいキーワードが乱舞する報告書の中で語られていた。

 2035年の「幸せな働き方」の前提となるのが、VRやAIによる技術革新。最新技術を最大限に働き方に生かせば、どこでもいつでも、場所に拘束されることなく働けるようになる。工場のように、実際にその現場に人がいなければならない作業は、ロボットがやる。

 技術を最大限に生かせば、「働き方」が変わる。多様な働き方が可能になり、「個」を生かした働き方を可能する…のだそうだ。

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「「働き方改革」が描く、自立の名の下の弱者排除」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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