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「寝たきりは作られる?」 虐待の地と化す“姥捨て山”

「自由」と「管理」の狭間で揺れる介護の現場

2015年9月15日(火)

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 耳を疑いたくなるような暴言と、目を背けたくなるような暴力的な動作、そして、「死んじゃうよ……」と振り絞るような悲痛な声。

 先日、メディアで報じられた“高齢者虐待”の映像は、あまりにショッキングで。怒りと悲しみとやるせなさで、グチャグチャになった。

 そうです。またもや、介護の現場の虐待が明らかになったのである(以下、日経新聞から抜粋)。

 虐待が明るみになったのは、入所者3人が相次いで6階のベランダから転落死した介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」。

 入所している女性(86歳)が今年6月、職員に頭をたたかれたり、暴言を吐かれたりする様子を長男が室内に隠したカメラで撮影。映像には、女性が「あー」と大きな声を出した後、職員が頭をたたき、女性が「私の頭をぶったからね。(家族に)言うからね。痛かった」と話す様子が写っていた。

 さらに、職員が女性を抱え上げ、投げるようにしてベッドの上に移動させたり、「うるせえ」と暴言を吐いたり、職員を呼ぶベッド脇の装置を取り外したりする職員の姿も。職員4人が関わっていたことが判明している。

 また、同施設では、今年3月に男性入所者(当時83歳)が入浴中に死亡していたという。

 これは……、一体どういうことなのだろう。

 もし、自分の家族が終の住処で虐待にあったら?

 もし、自分が介護が必要になって、暴言を吐かれたり虐待を受けたりしたら?

 今回のような報道があると、「被害者」の側に立った意見は山ほど出る。モラルは? 職員の質は? 管理体制は? と。

 もちろん虐待や暴力は、いかなる状況であれ、あってはならない。許されることではない。事故あるいは事件への対策も、徹底的な議論と取り組みが必要である。

 でも、その一方で介護の現場で働く人たちが置かれている過酷な状況を考えると、複雑な心境になった。以前、コラムでも取り上げた通りだ(「虐待許しますか? カネ払いますか?」 介護現場にうごめく感情の“不協和”)。

 先日他界した父の介護申請を、亡くなる数日前にしていたので、一段と複雑な気持ちになったのかもしれない。

 闘病でプレ介護状態にあった父は、亡くなる数週間前から突然、転ぶようになった。近所の郵便ポストに手紙を出しに行くだけでも転倒し、血だらけになって帰ってくる。父のサポートで精神的にも肉体的も限界に達していた母はパニックになり、「もうパパをひとり置いて出かけられない。家で転びでもしたら……」と泣きながら私に訴えてきた。

 私もできる限り実家に帰っていたのだが、仕事をしているので限界がある。そこで、介護認定を受け、生活支援の補助的なサービスで母の負担を減らしたい。そう考えたのである。

 今回の“事件”の現場となった、介護付き有料老人ホームを運営する企業は、介護業界の大手。業界に先駆けて入居金をゼロ円にするなど、「介護される方」の視点に立ったサービスで事業を拡大してきた企業である。

 これらの事件や事故を、いち職員、いち介護施設の問題だけで終わらせていいのだろうか? 社会の問題として考える必要があるんじゃないのか?

 繰り返すが、いかなる状況にあっても、暴力や虐待は許されることでない。だが、それでもやはり、もっと根っこの部分、なかなか聞こえてこない“声”に耳を傾けないことには、悲劇は後を絶たないと思う。

コメント9件コメント/レビュー

本来のあり方としてあまりに歪な構造になったからこういう問題が起こるのでしょう。あくまで時代を作るのは若者であって、年寄りではありません。時代を作るべき若者の足を年寄りが引っ張って本来すべき事を阻害するのはよろしくないと言うことです。であれば若者は年寄りの介護ではなくそういうものを含めてよくする方法を考えるのが筋でしょうし、年寄りは若者の足を引っ張らないように自分で出来るだけ頑張ってもらうということだと思います。でもこれって昔の日本にあったようなモデルだと思いますよ?(2015/09/30 09:37)

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「「寝たきりは作られる?」 虐待の地と化す“姥捨て山”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

本来のあり方としてあまりに歪な構造になったからこういう問題が起こるのでしょう。あくまで時代を作るのは若者であって、年寄りではありません。時代を作るべき若者の足を年寄りが引っ張って本来すべき事を阻害するのはよろしくないと言うことです。であれば若者は年寄りの介護ではなくそういうものを含めてよくする方法を考えるのが筋でしょうし、年寄りは若者の足を引っ張らないように自分で出来るだけ頑張ってもらうということだと思います。でもこれって昔の日本にあったようなモデルだと思いますよ?(2015/09/30 09:37)

転倒したり事故で死ぬと損害保険が義務づけされているから賠償額は500万円が相場、見舞いにもこない家族が介護施設に襲いかかります。
介護報酬が低いので家族を養えない、労働環境が悪いので常に人手不足になりストレスが強まり、認知症で身の回りのことが出来ないだけではなく徘徊や暴言が始まると乱暴な扱いになり易いのです。
財源がないので低所得の老人を養うことなんか出来ないことを理解するべきです。(2015/09/16 05:54)

妻の受け売りですが、自分で食べることが出来なくなったら、終わりでしょう。それでいいのではないかなと思います。生かされているという状況は、健常者のエゴのような気がしてなりません。ほとんどの介護は見直さなければいけないと思います(2015/09/16 00:50)

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三品 和広 神戸大学教授