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震災と風評被害対策

現地の実態と海外でのイメージとのギャップをいかに埋めるか

2016年5月16日(月)

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 今年のゴールデンウィーク、話題になったことの一つは、九州への旅行者の大幅減だった。熊本・大分での地震直後から、中国政府が九州への渡航自粛を求めるといった動きがあり、実際に大きな被害を受けた地域だけでなく、九州全体で旅行のキャンセル等が続いている。

 過去のさまざまな自然災害の際も同様だったが、観光需要については、被災地だけでなく、周辺まで風評被害を受ける可能性が極めて高い。これには、実態が構造的に伝わりにくいという背景がある。

 まず、被害を受けた建物や地域だけが報道されることになりがちで、実際以上に被害が大きい、あるいはリスクが高いと思われがちだ。

 私自身、1985年にメキシコシティで大きな地震にあった際に経験したのだが、市内の大部分の被害を免れた建物は取り上げられることがほとんどなかった。最低でも2万人を超す犠牲者が出た大地震ではあったが、低所得者向けのアパートや公設の病院などが数多く崩壊する一方、メキシコ市内でも無傷の建物は数多くあった。

 私が住んでいたアパートも相当揺れたものの、エレベーターは止まらず、室内での被害もほとんどなかった。朝7時ごろの地震で、その後通勤のため市内を運転していて、はじめて被害の大きさに気付かされたような状態だった。

被害状況の報道が誤ったイメージを流布させる

 報道というものの特性から、被害にあわなかった建物や地域はニュースバリューをほとんど持たない。このため、全壊・半壊した建物の報道写真やニュース映像が繰り返し、報じられることになる。

 これらを通じて、地域全体が甚大な被害にあったようなイメージが流布し、定着してしまうのだ。当然のことながら、こういうイメージを刷り込まれると、世界中からの観光客はかなりの期間、大きく減ってしまう。

 ちなみに、当時は、メールやSNS(交流サイト)が自由に使えるという時代ではなく、日本との通信手段はもっぱら国際電話だった。この頼りの電話回線がずたずたになってしまい、約半年間、国際電話がつながらず、親族以外との連絡は難しい状況だった。このため、被害を受けた建物・地域の写真や映像だけを見て、こちらの安否を案じてくれた友人たちには、随分と心配をかけてしまった。

 また、自国民以外にとっては、被害を受けた地域とそれ以外の都市等の間の正確な距離や位置関係は、はっきりとは頭に入っていないのが普通だ。このため、旅行を避けるべきだと考える対象地域が、無傷の地域も含めて広範囲にわたってしまう。今回で言えば、九州全体が余震で危険であるかのように思われる、ということだ。

 思い出されるのは、東日本大震災の際の、海外の新聞報道だ。原発事故の場所を日本地図上に示した紙面があったのだが、大きなX印が東京にかかる形で描かれていたため、(日本人にとっては信じられないことだが)東京も原発の被害を受けた、と思われてしまった。

 地図だけの問題ではなく、地域名がどれくらいの広さのもので、その中のどの部分が影響を受けた・受けているのか、というのは、国外あるいは国内でも遠い地域の人々から見ると大変わかりにくい。たとえば福島県内でも本来有数の観光地である会津地方は、相対的にみれば、震災・原発事故ともに受けた影響は比較的軽微だったのだが、いまだに国内外からの観光客減少に苦しんでいる。

 災害当初の緊急対応の時期を過ぎたあと、必要な支援の内容は変わってくる。地域経済の復興の一環としての観光。それへのダメージを軽減し、一日も早く災害以前の状態に戻すための風評被害対策も、いままさに必要な支援策のひとつだと思う。

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「震災と風評被害対策」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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