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実は本場には存在しない漢方という日本医療の価値

その認知度向上は日本のソフトパワー拡充にも役立つ

2015年6月29日(月)

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 「本場中国には、『漢方』は存在しない」

 よく考えてみれば当たり前だが、指摘されるまで気が付かずにいたことを教えてくださったのは、慶応義塾大学の漢方医学センター長をお務めになった渡辺賢治先生(現在は、同大学環境情報学部教授、医学部兼担教授)。毎年恒例の合宿勉強会に、講師のお一人として参加してくださり、漢方医学とは何か、について、こちらの蒙を啓いていただいた。

 (ここからは、渡辺先生の『漢方医学』(講談社選書メチエ)と勉強会でのお話に拠ることになる)

 そもそも、「漢方」という語は、江戸時代「蘭方」に対するものとして日本で作られた造語だ。中国の伝統医学を基にしてはいるが、江戸時代以降、病気の治癒効果のデータを積み上げて、日本独自で構築されてきた医学体系であるとのこと。

 医学者が儒者でもある場合が多かった時代。朱子学の理論体系重視に対して、実証主義的な批判が行われたことに影響され、医学の世界でも、当時の中国医学の理論偏重を批判して、「患者が治る」ことをあくまで重視する考え方が主流となり、経験の蓄積に基づく医療の進化が進んだという。

 一方、中国では、紀元前から伝統医学による診断・治療が行われてきたが、中国共産党が政権を握った後に統一化と体系化が行われ、「中医学」として再構築されている。

 当然、日本の漢方と同根だが、長年の間に異なった部分が大きくなってきている。例えば、症状(とその背景にある体質)を一種のパターンとして捉える「証」。これが、中医学の場合、漢方の10倍以上あり、3000近くになるという。これ以外にも、腹診を重視する漢方、脈診を重視する中医学、といった違い。薬の投与量も、中国の方が圧倒的に多いらしい。

 これらの違いと、「漢方は日本のもの」であることを踏まえると、渡辺先生によれば、「中国への旅行のパンフレットなどで、『漢方の本場を訪ねる』などとあったら、それは日本人向けに特別にアレンジされたものである可能性が高いので、要注意」であるそうだ。

日本文化に多様性をもたらす「編集能力」

 もともと海外からもたらされたものをベースにして、独自に発展させていく。あるいは、日本化させていく。これは、漢方以外でも様々な分野で見られるパターンだ。室町時代以降のお茶、茶道の展開。外来仏教と神道を併存させた神仏習合。漢字を日本語読みにした上、さらには独自の「かな」の創造。

 「編集工学」で知られる松岡正剛さんは、これを日本に特異な「編集能力」と捉え、日本文化の多様性の源泉として重視しておられる(出所:『日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 』=NHKブックス)。

コメント1件コメント/レビュー

本当にそう思います。
中国から来て、日本独自の発展をとげた漢方、鍼灸、經絡理論、指圧等)も総称して英語ではTraditional Chinese Medicineになってしまいます。私はあえてTraditional Oriental Medicineとしています。
この記事にあるように、仏教、茶道、等日本独自に発展、定着したものはその独自性をもっともっと英語で世界に向けて発信して欲しいです。(2015/06/29 19:48)

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「実は本場には存在しない漢方という日本医療の価値」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

本当にそう思います。
中国から来て、日本独自の発展をとげた漢方、鍼灸、經絡理論、指圧等)も総称して英語ではTraditional Chinese Medicineになってしまいます。私はあえてTraditional Oriental Medicineとしています。
この記事にあるように、仏教、茶道、等日本独自に発展、定着したものはその独自性をもっともっと英語で世界に向けて発信して欲しいです。(2015/06/29 19:48)

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