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日本のM&A巧者が明かす「株主還元ゲーム」の危険性

買収後に実践した鮮やかなグローバルガバナンス

2015年7月13日(月)

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 冒頭からいきなりで恐縮だが、次の2つの企業プロフィルをご覧いただきたい。

■企業Aのプロフィル
 明治31(1898)年に政府の一部門として発足。昭和24(1949)年に特殊法人化した後も、平成11(1999)年頃までは、国内向け事業が9割を占めていた。なお、現在でも政府が3分の1以上の株式を保有する特殊会社。

■企業Bのプロフィル
 グローバルな企業再編・集約が続く中で、世界第3位の地位を確保。日本に本社を置くが、営業利益の3分の2、販売数量の8割は海外市場から。大型の海外企業買収を複数回成功させてきた稀有な日本企業。

 すぐに気づかれた方もいらっしゃるかもしれないが、実はこの企業AとBは、同一の会社だ。一見、全く異質な特徴を有するこの会社は、日本たばこ産業(JT)である。

 企業Bのプロフィルとして挙げたが、JTは、1999年の米RJRインターナショナル、2007年の英ギャラハ―、と2度の大型買収を成功させ、その後に行った8件に上る買収・資本提携を含め、買収時よりも市場シェア・企業価値ともに明確に高めてきた「M&A巧者」として知られる。

 特に、2兆2500億円という巨費を投じた旧ギャラハ―の買収は、これまでの日本企業の行った海外M&Aの中でもトップクラスの大型案件だ。この大型買収を、買収後統合(ポスト・マージャー・インテグレーション=PMI)とその後のガバナンスの両面で成功させてきているのは、注目に値する。

 これらの買収案件に財務担当やCFO(最高財務責任者)として直接関わり、また買収後に被買収企業に送り込まれて、実際の経営にも携わったJT副社長の新貝康司さんが、『JTのM&A』(日経BP社)という本を出された。

 この本には、「日本企業が世界企業に飛躍する教科書」という副題が付けられている。拝読させていただいて、成長のベースを海外に置き、M&Aというなかなか一筋縄ではいかない手段を活用しようとする日本の経営者にとって、教科書ないし参考書として非常に役立つ内容だと思ったので、ご紹介する次第だ。

JTに見る海外企業を買収した後の要諦

 詳細は、同書を是非お読みいただくとして、私自身が本当に面白いな、と思ったのは次の2点だ。

 (1)海外経営人材を活用しつつ、経営の根幹はがっちりと握る仕組み(2)株主還元ゲームの危険性──の2つである。

 JTは、旧RJRインターナショナルを買収した後、海外たばこ事業の本社をスイスのジュネーブに置いている。その大きな理由は、買収した会社の優秀な経営陣を活用し、かつ海外のトップノッチの人材を獲得するのに有利な場所だったからだという。

 一定以上の規模の海外企業を買収した場合、買収先の経営層を活用しようと考える日本企業は多いのだが、問題は彼らをきちんとコントロールしきれるかどうかだ。

 本社側の意向がきちんと通らなかったり、見えていなかったリスクが突然顕在化して、大きな損失の計上を余儀なくされたり。どうやって、優秀な海外人材に任せながら、経営の根幹をきちんと押さえるかに悩む企業は多い。

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「日本のM&A巧者が明かす「株主還元ゲーム」の危険性」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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