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「言葉・数字・論理」への過度な依存からの脱却

無理な言語化、数値化はイノベーションの妨げになることも

2016年9月12日(月)

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(写真:Andrey Popov - Fotolia)

 臨床心理学者の河合隼雄さんが書かれたコラムに「目に見えない形」と題したものがある。

 心の病や傷の中には、薬や手術で治せないが、音楽で癒されるものがある、という内容で、長く臨床心理の現場におられた体験に基づく話なのだろう(初出は「ジュピター Vol.59」1999年12月。引用は「より道 わき道 散歩道」(河合隼雄著、創元社)から)。

 少し引用を交えて、ご紹介してみよう。

「人間は『目の動物』と言われたりするほど、生活を視覚に頼っている。(中略)この傾向があまりにも強くなると、目に見えないものは実在しないと考えたり、信頼しないということになったりする」
「現代人は(中略)人間全存在としての体験を視覚による体験によって限定してしまっていることが多い。心が知らぬ間に、堅く、狭くなっている。そして、堅く、狭い心ほど傷つきやすいのだ」

 このような状態にある時に音楽を聴くと、「目に見えない」音楽の構造が、「目に見えるものによって形づくられている」視覚に依存した構造に作用してくる。すなわち「目に見えない形が、堅く狭い構造をときほぐしてくれる。そんなときに、人は癒しを体験する」のだと言う。

 また、「深さのある」音楽を聴くと、視覚によって作られた構造に「閉じ込められていた感情」が呼び覚まされ、感情の動きを体験することができるとも言う。

 素人なりに解釈すると、五感のうち、視覚偏重で生きている現代人は、それにとらわれることによって、心の健康を害することがあり、聴覚に働きかける音楽は、それを癒す力をもっている、ということだろうか。

 たしか、このコラムを初めて読んだときに、自分自身が中学生だったときのことを呼び起こされた記憶がある。

 周囲から浮いた感覚がある自分、人間関係が不器用でなかなか理解してもらえない自分。思春期特有の悩みかもしれないが、そういったいわく言い難い「辛さ」のようなものが、ジャニス・ジョップリンの歌を繰り返し繰り返し聞くことで、すこしずつ溶けていったように感じられた体験だ。

 もう一つ抱いた感想は、これは、落語の効用にも似ているな、ということ。

 名人上手の落語を聞くと、耳から入ってくる情報が、頭の中で立体的な構造を作り上げ、まるで語られている内容のその「場」に自分がいるように思えてくる。そして笑いや哀しみという感情が、どこからともなく湧き上がってきて、聞き終わった後に一種の爽快感が残る。

 これは、視覚依存から離れて聴覚を働かせ、その上で心理的なカタルシスを経験するという意味で、河合先生の表現される音楽の効用に近いように思った次第だ(京都大学に通った身としては、河合氏、ではなく、河合先生、というのが自然なので、こう書かせていただく)。

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「「言葉・数字・論理」への過度な依存からの脱却」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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