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なぜストーカー事件はなくならないのか

くり返される悲劇から、逃げよ

2016年5月27日(金)

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 ストーカーによるアイドル刺傷事件のニュースに身がすくみました。私は普通の会社員ですが、知り合いの男性から執拗に交際を迫られ、困っています。一方的に思いを伝えられて、こちらは戸惑うばかり。周囲に相談しても「モテる人はつらいね」などと真剣に聞いてくれない人もいますし、たとえ真剣に聞いてくれても、いざトラブルとなったら巻き込むようなことは避けたい。何とか穏便に事を収めたいと思っています。しかし報道によれば、相手がストーカー化して、それを警察に相談しても十分な対応は期待できないとのこと。通勤時にも、ふと周囲に用心するようになったりして、精神的に参ってしまいそうです。(20代女性)

遙から

 芸能活動をしていた女子大生がストーカーに刺され重篤だという。まず何より、彼女の快復を祈りたい。このような理不尽な出来事で、彼女の夢を止めなければいけない理由など一切ない。

 そのうえで、なぜ、こういった悲劇がなくならないかについて書こうと思う。

 「アイドルが刺された」ことで大きく取り上げられたが、一般女性もまた似たようなケースで刺され、命を落としている。加害者は多くがストーカーとされる。

 こうした事件が起きた際、テレビのニュースや情報番組では、事件の概要を伝えたのち、「なぜ警察が女性を守れなかったのか」と問うコメントで着地して、次のニュースにいく。これをもう数十年、繰り返している。そしてきっと今後もストーカーは生まれ続ける。それはなぜか。時期尚早なのは承知のうえで今回の事件を例にとることをお許しいただきたい。

笑顔と妄想の間

 いわゆる女性アイドルとは、若く可愛くチャーミングな笑顔で主に男性を魅了するプロを指す。"若く可愛くチャーミングな笑顔"が好きな男性は、引きこもり気味の若者も、新地・銀座を闊歩する年配男性も含まれ、そのマーケットは幅広い。アイドルには時代と世代を超えたマーケットがある。それをつかめるのはごく一部だが。

 今回の事件について「SNS時代に、近い存在として錯覚してしまい、アイドルとの距離感を保てなくなったため」との解説を見聞きしたが、私はそれに納得しない。かつてインターネットがなかった時代からストーカーは存在し、銀幕のスターに至近距離まで近づき危害を加えた例もある。また今回、400通にも及ぶツイッターの書き込みがあったというが、数千回のメールで相手を追い詰めた例もあれば、数百通の嫌がらせの手紙だってある。新しいツールがストーカーを誕生させたと考えるのには違和感がある。

 ストーカーがなぜ生まれるかは、被害者が"アイドル"の場合、読み解きやすい。

 ストーカーになるタイプの男性は、まず女性への幻想が強い。純粋無垢で汚れを知らず天使のような女性がいると思っている。彼らの妄想に影響を与えるもののひとつがメディアだ。例えばテレビドラマでは、聖女と娼婦の対立構図が設定され、お約束の役割分担が女優たちにあてがわれる。女たちの間に立つ男性は、妻の浮気は「あり得ない」とし、下半身の奔放な女性を見下しながらも欲する。そんな男のジレンマが描かれる。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「なぜストーカー事件はなくならないのか」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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