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「人前で人を殴る人」に備えよ

理不尽な暴力がはびこるリアル

2016年7月8日(金)

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 名古屋のラジオ番組でメインパーソナリティの男性が女性アシスタントを殴ったという事件、驚きました。番組の進行は2人でやっているとはいえ、スタジオにはスタッフの人たちがいて、生放送で聴視者もいるわけですよね。そんな中で、たとえ思い通りに事が運ばないことがあったとしても普通、人を殴りますかね。どうしてそんなことが起きるのか、うまく想像ができず、混乱しています。もしそんな場面に自分が遭遇したらと思うと、心が落ち着きません。(20代女性)

遙から

 まずテレビの話からしたい。

 私は生放送の番組にいくつか出演させていただいている。収録番組とは違い、生、というのは独特の緊張感がある。ここで、構成表どおりにネタを消化しつつ、スタジオトークの盛り上がりぶりを判断して、どのネタをカットし、どのネタを突っ込むかの一瞬一瞬の判断と指示をするのがディレクターの仕事だ。ディレクターと出演者は船長と船員みたいなものとご想像いただきたい。

 出演者たちは自由に発言しているかのように見えるが、実は常時、船長の指示どおりにトークを運んでいる。船長は時間とスタジオの中とを常時見つつ舵を切る。それが「そろそろ締めて」とか、「CMに」とか、「テンポよく」「もっと参加して」といった指示として、現場のアシスタントディレクター(以下、AD)を通じて船員である出演者たちに伝えられる。

無視、懇願、怒鳴る

 だが、船員にも船員なりの感情というものがあり、まだ喋りたい、とか、ここを広げたい、という気持ちがあると、船長の指示に逆らうこともある。その方法はいくつかある。

 ADを無視する。
 ADに懇願する。
 ADを怒鳴りつける。

 無視したら、無視された船長は執拗に指示を下す。執拗に「締めて!」とADに伝えさせる。

 懇願したら、ADもまた出演者たちに懇願する。

 怒鳴りつけたら、ADは一応、引っ込む。

 この「怒鳴りつける」光景は、昔からタレント対ADの構図としてあった。昔はタレントがADを殴る、というのも私は見てきた。台本を丸めて頭を殴る。ペンを投げつけるなど、今では許されないパワハラが職場にあった。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「「人前で人を殴る人」に備えよ」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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