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就職難が変えた韓国の家族の風景

2015年9月30日(水)

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 9月27日は陰暦8月15日。韓国ではお盆、秋夕(チュソク)である。土日を入れて4日間の連休だった。秋夕には親戚一同が集まり、新米のご飯と収穫したばかりの果物、たくさんの料理を作り茶禮(チャレ、お正月とお盆に行う先祖のための祭礼)を行う。お盆が近づくと「主婦の苦労を知ろう」「夫の実家だけでなく妻の実家にも行こう」など、テレビの秋夕マナーキャンペーンが始まる。

 今年は特に、親戚が集まった場で姪や甥に「就職は決まったの?」と尋ねるのは絶対タブーだと、地上波テレビのSBS(ソウル放送)がマナーキャンペーンを行った。就職情報サイトJobkoreaが9月16日にアンケート調査を行い、「秋夕で集まった親戚から聞かれたくない質問」を聞いたところ、1位が「就職は?」、2位が「年俸はいくら?」、3位は「太ったんじゃない?」、4位は「結婚はいつするの?」だった。

 Twitter Koreaも9月「#マナーが_お盆を_作る(映画『キングスマン』のセリフをパロディにした)」キャンペーンを行った。家族間、親戚の間でもマナーを守って楽しいお盆連休を過ごそうという内容だった。Twitter Koreaは「秋夕には親戚から嫌な質問をされがちなので行った」と説明した。

 韓国メディアは2015年のお盆について、多くの大学生が帰省せず、会社員は海外旅行、帰省渋滞はいつもより少ないと報じた。地上波のMBCニュースは9月27日、帰省ラッシュはもう昔話だと報じた。車のナビゲーションシステムを使って渋滞を迂回する、高速鉄道を利用するなどの変化もあるが、秋夕の祝い方も変わったという。昔は秋夕の連休の間、家族や親戚とずっと過ごすのが当たり前だった。ところが最近は親戚が集まるのは半日もしくは1日だけ。あとはショッピングや旅行をして連休を過ごすという。

 大学生の場合は、「親戚に会って就職のことを聞かれたくない」という理由で帰省せず、就職のための勉強を続ける割合が非常に高いという。韓国の大学の学生会はお正月とお盆にソウル市内の大学キャンパスから各地方へ向かう帰省バスを運行してきた。通常の高速バスより3割ほど安く利用できるのでとても人気があった。ところが今年は利用者が激減して帰省バスを運行しない大学が増えたという。

工学を専攻しないと就職できない

 秋夕の風景を変えたのは、なんといっても史上最悪の就職難。韓国では就職難と青年失業が何年も前から問題になっているが、報道をみると2015年は特に厳しいようだ。

 9月19日付の朝鮮日報によると、就職難により韓国では文系の大学生が複数専攻で工学部を選択する割合が急増した。2011年まで、文系の学生が工学部を複数専攻する割合はゼロに近かったが、2015年からどの大学でも目立って増え始めたという。企業が商品の企画や営業、事務の仕事までも工学部出身を優遇するので、学生らは仕方なく工学部を複数専攻しているという。

 ソウル大学の場合、2015年3月に入学した文系新入生の24.4%が複数専攻するなら工学部を選択すると答えた。大学も就職サポートのため、文系と理系に分けず本人の望み通り複数専攻をできるよう制度を変えている。文系・理系を決めず、色々な専攻科目を受講できるようにする大学もある。

 政府機関の韓国産業人力公団は、2015年9月から文系大学生を対象に工学部の科目を教える講座を始めた。工学部の学生が高校で学ぶ内容からやり直し、工学部を複数専攻できるようにする講座である。韓国の大手企業は、複数専攻で工学部を選択した学生も通常の工学部出身者と同じように優遇するので、この現象はなくなりそうにない。

 雇用政策を研究する韓国雇用開発院の調査によると、2014年末時点で理工系卒業生の就職率は65.6%、文系卒業生の就職率は45.5%と差が大きい。全国経済人連合会(韓国の経団連のような団体)が韓国の企業を対象に行った2015年度新規採用調査でも、サムスン電子、LG電子、現代自動車は新規採用の8割以上を理工学出身にすると答えた。

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「就職難が変えた韓国の家族の風景」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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