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2030年代、財政赤字のGDP比は430%超に

「ドーマー命題」から読み取れる日本財政の現実

2016年1月6日(水)

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 2016年度予算案の国会審議が始まる。政府は2015年6月末に「経済財政運営と改革の基本方針2015について」(以下、基本方針2015)を閣議決定した。今回の予算は基本方針2015に盛り込んだ「新たな財政再建計画」に沿って編成した初年度の予算である。

 基本方針2015はその24ページで、新たな財政再建計画として、「2020年度PB(国と地方を合わせた基礎的財政収支)黒字化を実現することとし、そのため、PB赤字の対GDP比を縮小していく。また、債務残高の対GDP比を中長期的に着実に引き下げていく」という目標を明記している。

 新聞などのマスコミが多く取り上げるのは前者のPBの黒字化に関する目標だ。新たな財政再建計画は、2020年度までにPBを黒字化する従来からの目標のほか、2018年度のPBの赤字幅を対GDPで1%程度にする目安を設けている。

 だが、財政の持続可能性という観点では、債務残高の対GDP比を中長期的に着実に引き下げていくという後者の目標の方が重要である。これは、一定の条件の下、将来の債務残高(対GDP)の行き先を評価する「ドーマーの命題」から理解できる。

 ドーマーの命題とは、「名目GDP成長率が一定の経済で、財政赤字を出し続けても、財政赤字(対GDP)を一定に保てば、債務残高(対GDP)は一定値に収束する」というもの。

 名目GDP成長率がプラスの値nで、一定に維持する財政赤字(対GDP)をqとすると、簡単な計算(詳細は本コラム最後の注)により、債務残高(対GDP)の収束値は初期時点の債務残高(対GDP)には依存せず、以下の値となる。

 債務残高(対GDP)の収束値=q/n  …(#)式

 例えば、上記の(#)式において、財政赤字(対GDP)が3%(q=0.03)かつ、名目GDP成長率が2%(n=0.02)のとき、債務残高(対GDP)の収束値は150%(q/n=1.5)となることが分かる。

慎重シナリオで成長率と財政赤字を設定

 では、少子高齢化や人口減少が進む現実の日本経済において、この「ドーマーの命題」を適用すると、将来の債務残高(対GDP)の行き先をどう評価できるだろうか。

 評価に影響を及ぼすのは、名目GDP成長率や財政赤字(対GDP)の設定である。まずは、名目GDP成長率を考えてみよう。以下の図表1は、内閣府の公表データから作成した四半期別の名目GDP成長率(対前期比)である。水平な黒線は各々、1980年代、90年代、2000年代における名目GDP成長率の平均を表す線である。

図表1:名目GDP成長率(対前期比)の推移(四半期別・季節調整済み)
(出所)内閣府「四半期別GDP速報(名目季節調整系列・前期比)」から作成

 この図表を見ると、1980年代における名目GDP成長率(対前期比)の平均は1.6%、90年代は0.4%、2000年代以降はマイナス0.01%となっている。つまり、年率換算の名目GDP成長率の平均は、1980年代で6.4%(=1.6%×4)、90年代で1.6%(=0.4%×4)、2000年代でマイナス0.04%(=マイナス0.01%×4)である。

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「2030年代、財政赤字のGDP比は430%超に」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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