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2014年4月の消費税率引き上げのインパクトを再考

ネガティブな影響はほぼなし

2015年9月9日(水)

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 内閣府は9月8日、2015年4~6月期の実質GDP(国内総生産)の2次速報を公表した。これによると、同期の実質GDP成長率は前期比0.3%減で、3四半期振りのマイナス成長となることが確実となったが、1次速報(0.4%減)よりも上方改定されたことは若干朗報であった。

 だが、中国・上海株の急落や中国経済の悪化に対する懸念から、世界同時株安の様相も出てきており、2017年4月に予定する消費税率引き上げ(8%→10%)を巡る環境は、厳しくなりつつある。このような状況の下、増税判断を冷静かつ的確に行うために、2014年4月の消費税率引き上げ(5%→8%)のインパクトを整理しておく意義は大きいと考えられる。

 まず、税収への影響はどうか。今回(2014年4月)の増税前は「消費税率を引き上げても税収は増えない」との主張が根強く存在したが、これが間違いであることが明らかになった。「景気の上昇が税収増をもたらした――は幻想」の回で説明したように、2014年度の国(一般会計)の税収は54兆円となり、2013年度の47兆円から増えている。増えた7兆円(=54兆円-47兆円)のうち消費税の税収増は5.2兆円を占める。これは、「消費税率を引き上げても税収は増えない」との主張が妥当でないことを示す。

 ちなみに、97年4月の消費増税(3%→5%)のときに税収が減少したことには、累次の減税の影響が深く関係している。例えば、(1) 1999年から実施し2007年に終了した所得税の定率減税(年当たり2.7兆円)、(2) 2004年度以降の地方への3兆円の税源移譲、(3)累次の法人税率引き下げ(合計2.0兆円)などである。内閣府は、「平成24年度・年次経済財政報告」において、1997年度以降行われた所得税・法人税減税による恒久的な税収減は約9兆円であり、これらがなければ、単純計算では2007年度の税収は97年度の税収を上回っていたと試算している。

緩やかに低下傾向の潜在成長率

 次に、今回の増税が成長率に与えた影響はどうか。消費増税は、今回(2014年4月)の増税を含め、1989年の消費税導入(0%→3%)、97年の増税(3%→5%)の3回がある。

 「消費税再増税に対する慎重論に欠けている視点」の回で説明したように、増税が成長率に及ぼす影響を評価するためには、トレンド成長率との比較で分析する必要がある。つまり、消費増税が成長率に与える影響の大きさは、「実質成長率-トレンド成長率」と定義して評価するのが正しい。

 「消費税再増税に対する慎重論に欠けている視点」では、トレンド成長率として、以下の値を利用した。

  • 89年の増税評価:1980年代の実質GDP成長率の平均4.3%
  • 97年の増税評価:1990年代の平均1.5%
  • 今回(2014年)の増税評価:2000年代の平均1.4%(リーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機の影響を除くため2000~08年の平均を取った場合。2009年も含めると0.7%)

 だが、どうやら、今回(2014年)の増税評価において、2000年代の実質GDP成長率の平均1.4%を利用するのは問題があったようである。内閣府が8月31日、「今週の指標 No.1126」において、実質GDPの潜在成長率の値を0.5%に下方改定したからである。

 トレンド成長率の目安としては、実質GDP成長率の過去の平均的動向のほか、実質GDPの潜在成長率がある。以下の図表1は、内閣府が推計した潜在成長率の推移だ。この図表をみると、潜在成長率は一貫して低下傾向にあり、80年代の潜在成長率は4.4%、90年代は1.6%となっている。各々の値は、上記の「4.3%」「1.5%」と概ね一致する。

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「2014年4月の消費税率引き上げのインパクトを再考」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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