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一億とは国民全体、総動員すべき人々を指した

一億のイメージ史を辿る(1)

2015年10月10日(土)

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 安倍晋三首相は9月24日、アベノミクスの第2ステージとして「新3本の矢」を発表しました。

 まず「旧」3本の矢の内容を復習すると「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3つ。これに対して新3本の矢は「希望を生み出す強い経済(GDP600兆円)」「夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8)」「安心につながる社会保障(介護離職・待機児童ゼロ)」の3つになります。

 そして安倍首相がこれらの新しい矢を総称するフレーズとして持ちだしたのが「一億総活躍社会」でした。

 このフレーズを最初に聞いた時、筆者が感じたのは「安倍首相はずいぶんアナクロ(時代逆行的な)な表現を持ち出してきたな」ということ。これからじっくり解説しますが、国民全体を一億と総称する言語感覚は、バブル崩壊あたりを最後にほぼ廃れたと思っているからです。実際、一億を含む言葉には、一億玉砕とか、一億総白痴化とか、一億総中流といった言葉があるのですが、どれも古い言葉です。

 今回の「社会を映し出すコトバたち」は、国民の総称としての一億という言葉について、そのイメージの変遷を辿ります。本稿が独自に命名した「国家総動員の時代」「社会批評の時代」「ニュートラルな時代」の3つについて、代表的な言葉を紹介しながら、一億のイメージを分析しましょう。3回に分けての掲載です。

 1回目の本編は「国家総動員の時代」(だいたい1935年から1945年ごろまで)について分析します。

そもそも一億とは「誰」のことなのか?

 面白いことに、「一億」という項目を立てている辞書があります。例えば広辞苑・第6版(岩波書店)の一億の項目には、こんな説明が書いてありました。「1万の1万倍。1940年代、日本の人口を約1億人として、全国民の意に用いた。『-一心』『-玉砕』『-総懺悔』」。

 同版が発行された2008年の時点で、すでに「用いた」と過去形の解説になっている点も非常に興味深いのですが、そこはひとまず置きましょう(ちなみに全国民の意味を「過去のもの」とするかどうかは辞書により異なります。例えば三省堂国語辞典・第7版は単に「日本国民全体。」と説明していました)。

 ここで注目していただきたいのは、説明文中にある「1940年代」という記述です。この説明文は詳しく述べていませんが、一億と全国民の意味が強固に結びついていたのは、おおよそ戦中(とくに戦争末期)の話だったのです。

 ではこの時期の日本の人口はどのくらいだったのでしょう? 以下に日本の人口推移を示したグラフを紹介します。総務省統計局がウェブで公開しているデータを元に筆者が作図したものです。

 これを見ると分かるのですが、終戦前後の日本の人口はわずか7000万人台にすぎませんでした(例えば1945年は約7200万人)。1億人にはずいぶん足りません。ひょっとしたら一億は「盛った」表現だったのでしょうか。

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「一億とは国民全体、総動員すべき人々を指した」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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