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一億は「一億人」と呼ばれて初めてニュートラルに

一億のイメージ史を辿る(3)

2015年10月24日(土)

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 国民全体を意味する言葉、「一億」。この言葉が持つイメージの変遷を探る全3回のコラムです。第1回第2回では「国家総動員の時代」(一億一心から一億総懺悔まで)と「社会批評の時代」(一億総白痴化から一億総中流まで)を紹介しました。最終回の今回は「社会批評の時代」の続きと、「ニュートラルな時代」を取り上げます。

社会批評の時代(4)便乗語の数々

 存在感の大きな流行語が登場すると、数多くの便乗語が後を追うのが世の常です。これは「社会批評としての一億総◯◯」の場合も例外ではありません。

 ほかならぬ、一億総白痴化(テレビ番組の低俗性を批判した語)の実質的造語者である大宅壮一自身も便乗語を発信しました。それは「一億総評論家」。この言葉もやはりテレビに関係した言葉です。以下「大宅壮一全集・第3巻」(桜楓社/1980年)の「『一億総評論家』時代」から、大宅がこの言葉を使った箇所を引用しましょう。

 「またいまほど、評論家になることのやさしい時代はない。ラジオやテレビについて、何か発言すれば、すぐラジオ評論家となり、テレビ評論家となる。高校を出たばかりのような小娘でも、ひいき相撲の話でもすれば、たちまち相撲評論家として通用するのである。(中略)そこで、ラジオ、テレビは『一億総白痴化』の役割を果たす一方『一億総評論家』時代を現出しつつある」。

 言い換えると、彼は「ラジオやテレビの時代は誰でも評論家になれる」「新メディアの登場が、評論の敷居を低くしている」と言っているのです。ネット時代である現代の視点から見ても、先見性を感じる言葉です。余談ながら筆者もまた「新語評論家」のような仕事をしているわけで、大宅の指摘には耳の痛い部分があります。

 さて1970年代以降、一億総◯◯という表現は社会批評における常套句となりました。

 例えば書籍の題名を調べてみると、一億総◯◯というタイトルが多数存在することが分かります。ちなみに国会図書館のデータベース「国立国会図書館サーチ」で該当する書籍数を調べてみたところ、42冊(※)存在することが分かりました(※注:同館所蔵の書籍に限定した検索結果)。

 発見できた書籍名を列挙してみましょう。1970年代には「一億総素人時代:金儲けのラストチャンス」(高島陽著/文芸春秋/1970年)、「一億総天才論」(斎藤守弘著/日新報道/1972年)などが。1980年代には「健康自然食バイブル:一億総半病人時代に贈る」(双葉社/1983年)や「一億総グルメ時代の仕掛人たち」(平泉悦郎著/朝日新聞社/1985年)などが登場しています。

 このような書籍名は、最近発行された書籍にも見られます。例えばここ5年の間に「一億総ガキ社会 ~『成熟拒否』という病」(片田珠美著/光文社/2010年)、「ウェブニュース一億総バカ時代」(三田ゾーマ著/双葉社/2015年)といった書籍名が登場しているのです。

 社会批評としての一億総◯◯は、いまだ現役の表現なのです。

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「一億は「一億人」と呼ばれて初めてニュートラルに」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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