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“お家芸”X線天文学が迎える12年間の空白

「ひとみ」は最後の大型衛星になるのか

2016年3月2日(水)

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 三菱重工業は2月17日17時45分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究所のX線天文衛星「ASTRO-H」をH-IIAロケット30号機で種子島宇宙センターから打ち上げた。打ち上げは成功し、ASTRO-Hは「ひとみ」と命名された。同時に搭載されていた小型衛星3機も分離に成功し、それぞれ軌道上で動作していることが確認された。

打ち上げ前に公開されたASTRO-Hこと「ひとみ」(撮影:松浦晋也)

 ひとみは、全長14m、重量約2.7t。これは日本の科学衛星として最大規模だ。搭載する観測機器には米国が全面的に協力し、さらに欧州宇宙機関(ESA)、オランダ、スイス、フランス、カナダも参加する国際協力プロジェクトでもある。

 日本のX線天文学は、1970年代から定期的に観測衛星を打ち上げおり、世界的に見ても高い水準にある。今回、一部では「日本のお家芸」と報道されたりもした。

 しかし今、その“お家芸”は転機を迎えつつある。科学観測上の要求から衛星は大型化するが、予算は増えないからだ。「次のX線観測衛星は、目的を絞った小型のものになるだろう」と関係者は語る。

望遠鏡にとって“大きい=正義”

 宇宙科学は、宇宙に衛星や探査機を打ち上げて、宇宙を探る営みだ。ざっくり、1)地球周辺宇宙環境の計測や惑星探査機のように目的地まで赴く、2)地上では大気に遮られて観測できない赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などの電磁波で宇宙を調べる――の2つに分類することができる。どちらも、天文学の中の一部といっていいだろう。

 さて、望遠鏡という道具には、大きければ大きいほど、より細かいところが観察できるようになり、より微弱な電磁波をとらえることができるという性質がある。望遠鏡にとって“大きいことは正義”なのだ。

 1897年に米ウィスコンシン州ヤーキス天文台にレンズ口径1mの天体望遠鏡が設置されたあたりから、天文学の発達と並行して望遠鏡の大型化が始まった。望遠鏡の大型化が天文学の発達を促進し、発達した天文学がより一層の観測のために大きな望遠鏡を必要とした、というわけだ。ウィルソン山天文台(カリフォルニア州)の2.5m望遠鏡(フッカー望遠鏡、1917年完成)、パロマー天文台の5m望遠鏡(ヘール望遠鏡、1948年完成)と、望遠鏡は大型化し、その都度長足の進歩を天文学にもたらした。

コメント3件コメント/レビュー

宇宙科学に対する長期的な方針をどうするのかが最も重要でしょう。わが国は、故糸川先生のロケット研究開発から現在まで長い歴史があることと、日本の経済規模における投資絶対額と言う点は横において、曲がりなりにも投資を続け、科学や技術分野のおいて世界的にも貢献してきたのは事実でしょう。こう言う議論は、ついつい他者(他国)との規模や投資額、成果等の比較の上で語られてしまうことが残念である。確かにそう言う部分は当事者のおいて、特に切羽詰ったものがあるかも知れない。我々が忘れてならないのは、如何に先見性のある視点や考え方がそこにあるのか。また、実現するための知恵をどれだけ集め、様々な観点からよりよきアイディアを産み出せるかと言うことのほうが論点として重要だと思う。金はなくても知恵があったと故湯川秀樹博士のノーベル賞受賞は我々に誇りと勇気を与えてくれるのではないだろう。(2016/03/02 12:42)

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「“お家芸”X線天文学が迎える12年間の空白」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

宇宙科学に対する長期的な方針をどうするのかが最も重要でしょう。わが国は、故糸川先生のロケット研究開発から現在まで長い歴史があることと、日本の経済規模における投資絶対額と言う点は横において、曲がりなりにも投資を続け、科学や技術分野のおいて世界的にも貢献してきたのは事実でしょう。こう言う議論は、ついつい他者(他国)との規模や投資額、成果等の比較の上で語られてしまうことが残念である。確かにそう言う部分は当事者のおいて、特に切羽詰ったものがあるかも知れない。我々が忘れてならないのは、如何に先見性のある視点や考え方がそこにあるのか。また、実現するための知恵をどれだけ集め、様々な観点からよりよきアイディアを産み出せるかと言うことのほうが論点として重要だと思う。金はなくても知恵があったと故湯川秀樹博士のノーベル賞受賞は我々に誇りと勇気を与えてくれるのではないだろう。(2016/03/02 12:42)

基本的に宇宙開発と調査は予算の都合、限られた国にしか出来ません。人類が遠い未来に生存していると仮定して、やがて訪れる地球脱出の時へ備える事こそ、限られた国へ与えられた全人類、動物からの使命である。記事にもありましたが、直ぐに役立つ事は無いけれど、政策担当者の各位におかれては、超長期的な視野をもって計画を考えて頂きたい。(2016/03/02 12:29)

ひとみの打ち上げに成功に喜んでいたら絶望的な未来が示された感じです。今まで少ない予算でやりくりしていた物がとうとう予算不足で息詰まる、これ以上の発展が見込めない未来。なんとなく自費でTVを開発していた高柳先生が思い浮かびました。日本は思ったほど科学技術に金を投資しない国で地道に研究を続けノーベル賞等の国際的な賞を貰っていたイメージがあります。それに満足して?将来に向けての投資と言うのが少ない。もうすぐ科学立国と言うには恥ずかしい状況にならないよう政府には未来を見据えた投資をお願いしたいですね。(2016/03/02 09:49)

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