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新型ICBMで見えた、北朝鮮の強かな技術開発

「火星12号」の発射実験を読み解く

2017年5月19日(金)

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 ロケットエンジンの性能は、燃費に相当する「比推力」という指標で比較することができる。比推力が良いと、同じ推進剤の量で、最終的により高速に到達することができて射程が伸びる。ムスダンが、R-27の能力をコピーしようとしたものであるなら、ムスダンの4D10(のコピー)エンジンは、旧ソ連のものより比推力が下がっていると推定できる。

 もちろん、性能をつかませないためにわざと推進剤を減らす可能性もある。しかし、今回は6月のムスダンより大型の推進剤タンクを持つ火星12号を、射程4000kmに相当する軌道を飛行させたことからすると、6月のムスダンの飛行経路は、あれが精一杯のところだったのだろう。

 比推力低下による射程の短縮を補うには、タンクを大型化してより大量の推進剤を搭載すればいい。ただし、この方法は打ち上げ重量が増大するので、どんどんタンクを大きくして推進剤を増やせば、射程がどこまでも伸びる…というものではない。

 以上から今回の火星12号は、「コピーしたエンジンの性能低下を、推進剤をたくさん積むことで補って、R-27と同等の射程を確保しようとしたミサイル」とみることができる。

 おそらく、ムスダン(火星10号)と火星12号は、別の開発計画ではなく、「R-27のコピーを国産化することで米軍が展開するグアムを射程に収める」という戦略目標を満たすという、同一の開発計画の中のバリエーションなのだろう。

限られたリソースで着々と目標を達成

 このことは、「北朝鮮のエンジン技術が低い」ということを意味するのではない。「北朝鮮は、手持ちの技術をうまく組み合わせて目標を達成する技術的戦略性を発揮している」と見るべきだ。もしも、エンジンの性能をわざと切り下げることで信頼性を向上させているならば、今後、ムスダン/火星12号の成功率がどんどん向上することもあり得る。

 その上で、他の項目を見ていくと、北朝鮮が着実に戦略目標を満たしつつあることが見えてくる。

 まず、火星12号で、射程はR-27と同等のところまで到達し、グアムを射程に入れた。

 3)からは、北朝鮮がより高度な姿勢制御機能を開発したことがうかがえる。これは、命中精度が向上している可能性を示唆する。

 また、韓国の中央日報は17日になって、韓国政府筋が再突入した火星12号の弾頭内の装置類が最後まで作動していたという見方を示したと報道した。今回打ち上げられた火星12号の弾頭部分には地上との交信用アンテナが付いていた。中央日報は、政府筋がなにをもって内部装置が動作していると判断したかは報じていない。が、おそらくは、韓国軍が弾頭から送信される電波を傍受していたのだろう。

 今回の打ち上げでは、弾道は高度2000km以上からほぼ垂直に大気圏に再突入しており、かなり厳しい加速度と空力加熱にさらられた。つまり、北朝鮮は、再突入時に弾頭を空力加熱から保護する熱防護技術を完成させつつあると見て間違いない。

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「新型ICBMで見えた、北朝鮮の強かな技術開発」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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