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「いずれワシントンD.C.がICBMの射程に」と圧力

北朝鮮の新型ICBM発射実験を読み解く

2017年7月7日(金)

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今回北朝鮮が発射に成功した「火星14号」ミサイル(朝鮮労働党機関紙の労働新聞web版より)

 7月4日午前9時39分頃(日本時間)、北朝鮮は朝鮮半島西部の平安北道(ピョンアンブクト)・亀城(クソン)から新型大陸間弾道ミサイル「火星14号」を発射した。同ミサイルは、朝鮮半島北部を東に横切り、高度2802kmまで上昇した後に落下し、発射地点から930km離れた日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾した。

 今年5月14日に発射された「火星12号」ミサイルは、高度2111.5kmまで上昇し、発射地点から787km離れた日本海の公海上に落下した。火星12号の射程は4000kmと推定されたが、より高い高度に到達した今回の火星14号は射程5600~7000kmと推定されている。グアム、ハワイはもちろんのこと、アラスカをも射程に収める能力があるということだ。

 今回の発射で、米国は一度「より射程の短い中距離弾道ミサイル(IRBM)だ」だとコメントしたが、7月5日ににティラーソン米国務長官がICBM発射を非難する声明を出して、米政府として火星14号がより長射程のICBMだと判断したことを間接的に明らかにした。

冷戦時代の区分ではまぎれもなくICBM

 火星14号の打ち上げで、北朝鮮は「わが国は核兵器とともにICBMを保有した、堂々たる核保有国として、アメリカの核戦争の脅しを終わらせるだろう」とする声明を発表した。

 ICBMというミサイルの区分は冷戦期の核軍縮交渉において、ミサイルを分類する必要性から生まれた。1972年に米国と旧ソ連との間で締結された第一次戦略兵器制限交渉(SALT I)において、射程5500km以上のミサイルをICBMと定義し、その保有数を制限したのが始まりとなる。

 この定義に従えば、射程5600~7000kmと推定される火星14号は、間違いなくICBMである。が、射程5500km以上という区分は、米国・旧ソ連の位置関係から決まったもの(米本土の北東端と、ソ連本土の北西端の最短距離が5500km)であって、米国・北朝鮮の関係において、「北朝鮮が(冷戦時の定義上の)ICBMを完成させたから、両国の関係が劇的に変化する」ということではない。

 ただし、じわりと両国の間の緊張が高まったことは間違いない。北朝鮮は5月の火星12号で、米軍が展開するグアム島を射程に入れた。今回の火星14号は、最低見積もりでもぎりぎりアラスカに到達し、最大見積もりではアラスカ州のほぼ全域を射程に収めることになる。

 北朝鮮がたとえ核兵器を保有しているとしてもアラスカ州を攻撃する戦略的必然性はない。攻撃すれば米国の報復を招くだけだからだ。ただし、米国としては、今後「アラスカが攻撃される可能性」を常に念頭に置く必要がでてくる。

 それ以上に米国が神経を尖らすのは、北朝鮮のミサイル開発が着実に進展し、射程を伸ばしている、ということ自体だろう。

 北朝鮮の目標は明確で、米国の首都ワシントンD.C.を射程に収めるミサイルと、そのミサイルに搭載可能な核弾頭を開発することによって、米国を二国間交渉に引きずり込むことだ。今回発射実験を行った亀城からワシントンD.C.までの距離は、約1万1000km。

 まだかなり差があるようにも思えるが、北朝鮮は、2012年に「銀河3号」ロケットで、地球周回軌道に衛星(ないしは衛星のダミー)を投入している。これは、射程1万km以上のICBMを開発する潜在的能力が十分にあることを意味する。

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「「いずれワシントンD.C.がICBMの射程に」と圧力」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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