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北朝鮮のミサイル、“目標”はあくまで米国

日本上空を通過した軌道から考える

2017年8月30日(水)

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 北朝鮮のミサイルが日本上空を通過した――8月29日午前5時58分頃、北朝鮮は平壌近郊の順安(スナン)から、中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射した。ミサイルは6時5分から7分頃に渡島半島から襟裳岬の上空を通過、6時12分頃に襟裳岬東方約1180kmの公海に落下した。途中ミサイルは3つに分離し、それぞれはほぼ同海域に落下している。飛翔距離は約2700km、到達高度は550km。日本政府は、北朝鮮が5月14日に発射したIRBM「火星12型」である可能性が考えられるとしている。

5月14日に発射された火星12型(朝鮮労働党機関紙の労働新聞web版より)

IRBMが日本に与える脅威は小さい

 様々な観測と、高まる脅威が語られている。それを否定するものではないが、このコラムではあくまで、現時点で分かっている事実(もちろん調査が進んだ後、修正されることもあり得る)に立脚して、今回のミサイルの日本上空通過にどのような意味があるのかを考えてみよう。

 まず押さえておくべきは、今回のような軌道でIRBMが発射された場合、日本への被害はゼロか、あったとしてもごく軽微ということだ。

 ミサイルは日本領空通過前に、高度100km以上の宇宙空間に出てしまう。今回の場合、襟裳岬上空で最高到達高度550kmになったということだ。もちろん勢いがあるからまっすぐ直下の日本に落ちてくることもない。日本に被害が及ぶとすれば、発射後の早い段階の加速途中でエンジンが停止したり爆発を起こしたりして、本体、あるいは破片が日本に降ってくる場合だけである。日本と北朝鮮は、IRBMを使うには近すぎるのだ。日本にとっての現実的な脅威は、より射程の短いミサイルの「ノドン」なのである。

 発射地の順安は平壌北方の平壌国際空港があるあたりなので、仮に発射地を平壌国際空港として、襟裳岬上空を通過したとすると2700kmを飛んだことになる。日本政府は「渡島半島上空を通過」と発表した。津軽海峡の上空を狙ったような軌道だ。

 この経路は、「日本への刺激を最小限にするために、陸上を避け、津軽海峡を飛ばした」と見ることができる。実際、北朝鮮が、日本への示威行為を目的とするならばIRBMを使う意義は薄い。より直接的なノドンを使うべきなのである。

コメント15件コメント/レビュー

今回の北朝鮮のIRBMを打つ方角は、彼らなりに相当配慮していますね。
韓国・ロシア・中国領土を通らずに日本の国土(陸地)も出来るだけ通らないコースを選定してます。
つまり方角に関しては狙い通りに打てる事を意味しており、ミサイル技術に関しては後は距離だけの問題ですね。それもロフテッド軌道も出来るし距離を稼ぐこともできる(今回)としたらほぼ完成間近ですかね。。。
安倍総理の批判をされている方もいらっしゃいますが、上記の通り北朝鮮は出来るだけ日本の国土を通らないようにコース設定していますが、失敗する可能性もあるし、破片が落ちる可能性もある。ちょっと角度が逸れれば関東に向いちゃう可能性もある。だからあの声明や対応は必然です。結果論で言っても何も意味はありません。。。(2017/09/01 10:02)

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「北朝鮮のミサイル、“目標”はあくまで米国」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今回の北朝鮮のIRBMを打つ方角は、彼らなりに相当配慮していますね。
韓国・ロシア・中国領土を通らずに日本の国土(陸地)も出来るだけ通らないコースを選定してます。
つまり方角に関しては狙い通りに打てる事を意味しており、ミサイル技術に関しては後は距離だけの問題ですね。それもロフテッド軌道も出来るし距離を稼ぐこともできる(今回)としたらほぼ完成間近ですかね。。。
安倍総理の批判をされている方もいらっしゃいますが、上記の通り北朝鮮は出来るだけ日本の国土を通らないようにコース設定していますが、失敗する可能性もあるし、破片が落ちる可能性もある。ちょっと角度が逸れれば関東に向いちゃう可能性もある。だからあの声明や対応は必然です。結果論で言っても何も意味はありません。。。(2017/09/01 10:02)

「”我が国に発射”という根拠の無い恣意的な発言」などとは言えませんよ。 試作品レベルのミサイルが予告なしで上空を通過しているわけです。 日本の民間ロケット開発会社の試作品は見事にコケましたが、あれが自宅の上を通過することを想像してみたらどうですか?

「脅威を徒に煽るのではなく両国に対して平和的なアプローチをすべきである」なんてセリフは、相手を選んで使うべきです。 平気で嘘をつく相手に、「戦略的忍耐」なんて猶予を与えていたから核兵器の開発を加速させているわけです。 無邪気に仰っているなら苦笑するだけですが、我々の子孫にツケを回すのはおやめいただきたい。(2017/08/31 22:30)

「ミサイル発射施設を事前に狙う敵地攻撃と報復力による抑止しかない.したがって,9条改正または無視しかない.」とコメントされた方は、「自衛隊って他国を(やって意味のあるほどの)攻撃をする能力は無い」ということを理解されたうえでコメントされているのでは? 今は能力が無いから対策を急がねばという意味ではないですか?

それが核抑止力までいくのか、或いはトマホークを数千発(安いものです)輸入するのかは分かりませんがね。 今時、自衛隊の能力を買い被っている方は少ないでしょう。(2017/08/30 22:17)

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