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「火星に行くぞ!」と決めた企業の研究開発戦略

莫大な技術開発費を、現実の経営の中でどうひねり出すか

  • 松浦 晋也

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2016年9月14日(水)

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 火星への移民を実現させるとするスペースXのイーロン・マスクCEO――しかし、そのためには多くの道具立てが必要となる。それを開発する費用は天文学的なものになりそうだ。

 そのために、同社はシリコンバレーのIT企業ばりの戦略を取ってきた。前編(「危ない橋を素早く渡る!」スペースXは止まらない)で、大事故にも凹まない同社の経営スタイルを紹介したが、今回は、もっと具体的な新技術開発の側面から見ていこう。同社の技術開発を観察すると、「火星に行くための技術開発費を、地上の経済の中でどう合理的にひねり出すか」に意を砕いている様子が見えてくるのだ。

 典型例が、開発中の有人宇宙船「クルー・ドラゴン」だ。クルー・ドラゴンは、「スーパー・ドラコ」というロケットエンジン8基を装備しており、打ち上げ途中でのロケットにトラブルが発生した時は、エンジン噴射でロケット本体から離脱する。同時に、宇宙からの帰還時も、パラシュートを使うのではなく、スーパー・ドラコの逆噴射で地上に軟着陸する設計となっている。逆噴射で帰還する理由は「この方式なら重力のあるどの天体にも着陸できる」からだ。

 今年5月、スペースXは、クルー・ドラゴンを無人の火星着陸機に改装した「レッド・ドラゴン」を自社の民間ミッションとして、早ければ2018年にも火星表面に送り込むと発表した。火星を最終目標と定めて、火星でも使える技術を地球向けに開発してきたわけである。しかも、この宇宙船は現在NASAからの補助金を受けている。

 ではロケットはどうか。火星への移民を行うならば、なによりも大型のロケット、それもアポロ計画に使われた「サターンV」よりも大きく、かつ低コストのロケットが必要になる。そのような大型ロケットを、スペースX社は「マーズ・コロニアル・トランスポーター(MCT:火星植民輸送船)」と呼んでいる。

 MCT開発の第一歩となると目されるのが新エンジンの「ラプター」だ。スペースXは、2016年8月9日、同社の新型ロケットエンジン「ラプター」の最初の1基を完成させ、テキサス州マクレガーに保有する燃焼試験施設に搬入したと公表した。

 ラプターについては、まだ限られた情報しか公表されていない。ロケットエンジン外観の写真すら公表されていない。が、その情報からは、MCTがどのようなものになるかが、おぼろながら見えてくる。

新しいエンジンサイクル、新しい推進剤の理由

 ラプターは、推力230tfクラスで、メタンと液体酸素を推進剤に使う。推力は2300kN(約230tf)。

 200tf級で、メタン・液酸の推進剤というところは、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベソス氏率いるブルー・オリジンが開発している「BE-4」エンジンと同じだ。大きく異なるのは、エンジンの動作形式である燃焼サイクルだ。BE-4は酸素リッチ2段燃焼サイクルを採用しているのに対して、ラプターは、フルフロー2段燃焼サイクルなのである。

 ロケットエンジンの性能の指標のひとつで、ほぼ燃費と同じ意味を持つ比推力は、1気圧の地上で321秒、真空中で361秒(奇妙に思えるかも知れないが、比推力は秒という時間の単位を持つ)。エンジン設計は、完全な再利用を前提としている。

 2009年から、スペースXの社内プロジェクトとして開発が始まったが、2016年1月に同社は米空軍と、ラプター試作品の製造と燃焼試験のための3360万ドルの補助金を受け取る契約を結んだ。

 今の所、スペースXはラプターに関してこれ以上の情報を出していない。

 フルフロー2段燃焼サイクルは、通常の2段燃焼サイクルよりも高性能を狙える、「究極」ともいえるロケットエンジンの形式だ。具体的にどんなものなのか、ご興味があれば記事の最後に添えた囲みを見ていただきたい。

 ここでその利害得失だけをまとめると、一層の高性能が狙える上に、エンジンの安全性と耐久性も高まる。その一方で、フルフロー2段燃焼サイクルは、燃焼室が燃料向け、酸化剤向け、主燃焼室と3つも必要で構造が複雑になるので、エンジンが重くなり、高コスト化するという欠点も持つ。

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