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新しい「長征」が中国の宇宙開発を加速する理由

“早くて安い”宇宙技術開発のインフラを手に入れた

2015年10月20日(火)

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 中国の国家航天局は9月20日、同国の新世代ロケットの皮切りとなる「長征6」ロケット初号機を太原衛星発射センター(山西省)から打ち上げた。

 さらに航天局は9月25日、酒泉衛星発射センター(甘粛省)から、同じく新世代の「長征11」の初打ち上げを実施。わずか5日の間隔で、新型ロケット2機種の初打ち上げを相次いで成功させたわけだ。

打ち上げ前の長征11(画像は中国中央電視台より)。長征11は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のように保護筒(キャニスタ)から打ち上げる。技術的にICBMと共通点が多いせいか、中国は長征11の全体像が分かる写真や打ち上げ時の映像を公開していない。

 長征6と長征11は、現在中国が開発している次世代長征ロケットシリーズ(長征5~7、11)の中で、もっとも小さなペイロードを打ち上げる役割を担う。特徴は、打ち上げ準備作業を極力簡便化して打ち上げコストを下げることを主眼に設計されていることだ。

 2機種の新型ロケット、その主な目的には、開発期間の短い小型・超小型衛星の打ち上げが含まれる。実際に今回、長征6は大学・研究機関などが開発した20機の小型衛星を地球を南北に回る太陽同期極軌道に投入。長征11は4機の小型衛星を軌道に投入した。

 ロケットと衛星の簡便化にはどういう意味があるのか。筆者は、これは中国の宇宙技術開発を大きく加速させる可能性があると見る。

 もともと衛星には「故障しても修理に赴くことができない」という宿命がある。

 また、現在、国家機関が開発する衛星や商業市場向け静止衛星は大型化し、開発期間は長期化し、開発コストは高騰する傾向にある。

 カネがかかる上に修理不可。となると、失敗を極力減らす方向で設計せざるを得ない。自然、保守的、かつ軌道上で実際に動作した実績のある部品や設計を優先的に使用することになる。その結果、大型衛星には新しい技術が入りにくく、地上用の同目的の機器と比べると旧式のものとなっている。“宇宙で使う技術”という言葉には最新鋭のイメージがあるが、実際には「古くても確固とした実績のある技術の集合」である。

 対して、数百~50kg程度の小型衛星、それ以下の数十kg~1kg程度の超小型衛星は、安く作れて開発期間が短いので、新技術のテスト的な採用に向いている。例えば宇宙で使った実績のない最新の民生用電子部品も、思い切って使用することができる。失敗しても、“次”を打ち上げればいい。

射点に立てられた長征6(画像は上海航天)。たいへんすっきりと整理された、簡 素な射点設備だ。ロケットの設計に打ち上げ準備の簡素化が織り込まれ ていることがうかがえる。

 つまり、小型・超小型衛星を使えば、少ない予算でも多数の研究開発を同時並行的に展開できる。数を武器に、短期間で宇宙技術開発を多方面で進展させる手段を中国は手に入れた。

 もちろん、そもそもテストすべき技術要素がなければ何にもならないわけだが、すでに中国は全国の工学系大学に予算を付けると同時に、北京、重慶、天津、上海に航空関連産業の集積地を作り、宇宙産業を振興しようとしている。これら大学・企業群の研究開発には低コストでリスクをとることのできる小型・超小型衛星がもってこいで、今回、それらの衛星を打ち上げる低コスト・高打ち上げ頻度の手段が稼働し始めたわけだ。

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「新しい「長征」が中国の宇宙開発を加速する理由」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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