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H-IIA、悲願の静止衛星商業打ち上げに成功

本格参入までまだまだ続く、曲がりくねった長い道

2015年11月25日(水)

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 2001年にH-IIAの運用が始まってから、日本は三菱重工を中心に体制立て直しを図った。まず2002年、H-IIAの打ち上げの主体を宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、民間の三菱重工に移管することを決定する(実施は2007年9月)。

 2006年にはロケットシステムを解散して、営業を三菱重工に集約。韓国航空宇宙研究院(KARI)の地球観測衛星「アリラン3」の打ち上げを受注して2012年5月にH-IIA21号機で打ち上げ、そして2013年9月にテレサット社から今回の打ち上げを受注した。今年3月にはドバイの地球観測衛星「ハリーファサット」の打ち上げも受注した。

トップセールスとダンピング

 じりじりと実績を積み重ねているように見えるが、その内実は必ずしも楽観できるものではない。「アリラン3」の打ち上げは、国対国の政治家レベルのトップセールスを行ってやっと獲得したものだった。しかも打ち上げ形態はJAXAの地球観測衛星「しずく」の打ち上げと同時で、費用の多くはJAXAが支出している。「しずく」だけでは余剰になる打ち上げ能力で「アリラン3」もやりましょう、というものだった。

 当然、打ち上げ価格はかなりの“ダンピング”で、当時韓国国内では130億ウォンとも193億ウォン(当時のレートでそれぞれ約9億円と13億円)とも報道された。政治に頼り、実質的にJAXAに支援され、かつ激安価格を提示して、やっと獲得した契約だったわけだ。

 今回の「テルスター12V ヴァンテージ」の打ち上げでは、ロケット第2段にJAXAが新規開発中の「高度化第2段」を使用した。詳細は非公開だが、新規開発アイテムの初打ち上げの費用は開発コストとしてJAXAが持つのが普通。ということで、JAXAが今回の打ち上げ費用を一部負担している模様だ。ドバイの「ハリーファーサット」の打ち上げも、「アリラン3」と同じく環境省/JAXA/国立環境研究所の温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT-2」との相乗りを予定している。

 つまり、これら3つの打ち上げは陰に日向に国から様々な支援を得て成立したものであって、完全に独立した商業契約に基づくものとは言いがたい。

 とはいえ、米国にせよ欧州にせよ、打ち上げ産業には国が手厚い政策的な支援をつけている。このような形であってもひとつひとつ実績を積み重ねていくことで、市場からの信用を得ることでしか、本格的な市場参入を成功させる道はない。

商業打ち上げのサービス向上を担う「高度化第2段」

 さて、その「高度化第2段」だが、これは第2段ロケットに追加の仕事をさせて、衛星を静止軌道に近い軌道まで運ぶための改良のことだ。

 静止軌道への打ち上げでロケットは、まず低い高度の円軌道「パーキング軌道」に入り、そこから“静止軌道一歩手前”の「静止トランスファー軌道」まで衛星と一緒に飛んで行く。静止トランスファー軌道は細長い楕円形で、地球から一番遠いところ(遠地点)が、静止軌道と同じ赤道上空3万6000kmとなる。

静止トランスファー軌道(geostationary transfer orbit、GTO)の楕円率(短径と長径の比)は、ロケットの性能次第でさまざまに変わる。

 衛星は遠地点に到達したタイミングで、自分が装備した小さなロケットエンジンを噴射して静止軌道に乗り移る。静止トランスファー軌道までがロケットの仕事で、そこから静止軌道への乗り移りは衛星の仕事、という切り分けだ。

 ここでロケット側がいつもより余計に仕事をして、従来より静止軌道に入りやすいトランスファー軌道まで衛星を運んでやれば、衛星側が乗り移るための燃料が少なくて済む。すると、その分衛星の燃料=寿命が延びる。衛星運用事業者はその分、衛星を長く使って収益を上げることが可能になる。

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「H-IIA、悲願の静止衛星商業打ち上げに成功」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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