H-IIA、悲願の静止衛星商業打ち上げに成功

本格参入までまだまだ続く、曲がりくねった長い道

H-IIA29号機は浮き雲を貫いて、晴天の種子島の空へ上っていった。固体ロケットブースターを4本装備した204型は初期加速が大きい。(撮影:松浦晋也)

 2015年11月24日午後3時50分、三菱重工業(以下三菱重工)は種子島宇宙センターから、カナダの通信事業者テレサットの通信衛星「テルスター12V ヴァンテージ」を搭載したH-IIAロケット29号機を打ち上げた。打ち上げは成功し、午後8時16分50秒、衛星を予定の軌道に投入した。

 日本は過去30年以上も静止衛星の打ち上げ市場への参入を目指しつつ、跳ね返され続けてきた。今回の打ち上げは、日本にとって悲願実現に向けた第一歩といえる。

 しかし今回の打ち上げ成功で、すぐに道が拓けたと考えるわけにはいかない。実績を一つ積んだことは事実だが、H-IIAというロケットと種子島という射点が抱える悪条件は消えたわけではないからだ。三菱重工は、年1回程度の打ち上げを受注したいとしているが、商業市場からの継続的な打ち上げ受注が実現するまでには、まだまだ紆余曲折があることは間違いない。

国が手を尽くしてやっとたどり着いた入り口

 通信・放送などに使われる民間事業者の衛星は、民間の打ち上げ事業者のロケットによって赤道上空3万6000kmの静止軌道に投入される。静止衛星の商業打ち上げ市場は、現在年間に衛星20機ほど。複数の衛星を同時に打ち上げることもあるので、打ち上げ回数で見ると年間おおよそ15回。市場規模は50億ドル程度で、決して大きくはない。

 その小さな市場に、欧州のアリアンスペース、ロシア・米国合弁のインターナショナル・ローンチ・サービス(ILS)、米国のスペースXなどの打ち上げ事業者がひしめいている。さらに、米国の官需打ち上げを一手に担っている米ユナイテッド・ローンチ・サービスや、中国、インドが市場参入を狙っており、もはや過当競争状態だ。

 日本は先代のH-IIロケットの概念検討を開始した1980年代初頭からこの市場に国産ロケットで参入しようとしてきた。H-IIも、後継のH-IIAロケットも、静止衛星打ち上げ市場への参入を前提に設計されたし、1990年には主要宇宙関連企業や商社などの出資で、打ち上げ事業を販売するロケットシステムという会社も設立し、営業活動を続けてきた。

 しかし、新参故の信用不足、ライバルに対しての高コスト、そして1990年代後半から相次いだ打ち上げ失敗などにより、受注は取れず、一度取った契約も破棄されたりで、長年打ち上げ実績がない状態が続いた。

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著者プロフィール

松浦 晋也

松浦 晋也

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

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