• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

イプシロン2号機の成功と「国防上のブラフ」効果

日本の「棚の上の技術」を富ませるために

2016年12月27日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

イプシロン2号機の打ち上げ。強化型イプシロンの1号機である(撮影:柴田孔明)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、12月20日午後8時、ジオスペース探査衛星「ERG」を搭載したイプシロンロケット2号機を打ち上げた。打ち上げは成功し、打ち上げ後13分27秒でERGを予定の軌道に投入した。成功後、ERGは「あらせ」と命名された。

 イプシロン2号機は「強化型イプシロン」という名称を持つ。2013年9月14日に打ち上げた初号機と比較すると、第2段の強化により、地球を南北に回る太陽同期極軌道への打ち上げ能力が、450kgから590kgに増強されている。打ち上げ後の記者会見でプロジェクト・マネージャーを務める森田泰弘JAXA・宇宙科学研究所教授は「試験機であったイプシロン初号機の段階では、自分の抱く自信には精神論的な部分が大きかった。が、今回の強化型イプシロンを予定日に打ち上げできたことで、精神論ではなく物理的に『確実に打ち上げることができる』という自信を持った」と述べた。

 2号機の後もイプシロンの開発は続く。3号機では、衛星をより正確な軌道に投入する「ポスト・ブースト・ステージ」という液体エンジンの小推力の段と、分離時に衛星に与える衝撃が小さい衛星分離機構が搭載される。この3号機で強化型イプシロンの開発は終了し、当面は完成した強化型イプシロンの打ち上げが続く事になる。

 が、イプシロンの開発は3号機で終わりではない。続いて、現在開発中の大型ロケット「H3」の固体ロケットブースターを第1段として使用する「シナジー・イプシロン」の開発が始まる。現在のイプシロンは、H-IIAロケットの固体ロケットブースターを第1段に使用しているが、H-IIA用ブースターは、2020年代初頭のH-IIA引退と共に生産を終了するからだ。

 シナジー(synergy)は「共働」という意味だ。ここではイプシロンとH3の協力を意味する。H3とシナジー・イプシロンは、設計段階から共通化を積極的に進めており、イプシロンで開発した機器や、先行して適用した設計思想がH3に組み込まれている。さらにその先には、より低コスト高パフォーマンスを徹底したイプシロン完成型の構想も存在する。

 先代のM-Vロケットが2006年に廃止になってから10年、2010年にイプシロンの開発が始まって7年――強化型の打ち上げ成功で改めて明確になったことが2つある。M-V、そしてイプシロンのように「研究開発を続けるロケット」は日本にとって必要であるということ、そして、安全保障面での“ブラフ”として、全段固体の高性能ロケットが必要、ということだ。

科技庁vs文部省の遺恨試合からの復活

 そもそもの始まりは、2001年の中央官庁統合により文部省と科学技術庁が統合されて文部科学省となったことだった。

 文部省と科学技術庁は1960年代にロケットの管轄を巡って大規模な権限争いを展開しており、1966年に「どっちの側からも有利に読める玉虫色」の国会報告という形で決着を図った。

コメント5

「宇宙開発の新潮流」のバックナンバー

一覧

「イプシロン2号機の成功と「国防上のブラフ」効果」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

定年後の社会との断絶はシニアの心身の健康を急速に衰えさせる要因となっている。

檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師