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香港銅鑼湾書店「失踪事件」の暗澹

香港の一国二制度を見殺しにするな

2016年1月13日(水)

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 年明け早々の私にとって一番衝撃的なニュースは銅鑼湾書店の関係者が次々と失踪したことだ。香港の出版界にひしひしと圧力が迫っていることは承知していたが、まさか香港内に住んでいる人間、しかも外国パスポートを持っている人間が突然消えるほど、香港が物騒なことになっているとは。

 銅鑼湾書店関係者の失踪は5人。まず昨年10月17日に店筆頭株主・桂民海の行方が分からなくなり、10月24日に同書店の創始人で店長の林栄基が消え、10月26日に株主の呂波、書店経理の張志平、そして最後に12月30日に店主の李波がいなくなった。いったい何が起きたのか。私にとっても大事な書店であり、関係者の無事と書店の存続を切に願うものとして、今わかる情報を整理しておきたい。

禁書、絶版本が充実した「二楼書店」

 銅鑼湾書店とは、香港の書店文化の一つである「二階書店(二楼書店)」(個人がテナント料の安い雑居ビルの二階の一室で開く趣味に走った書店)の代表的な店の一つで、1994年に開業した。いわゆる中国政府や共産党の権力闘争の内幕を“関係者が匿名で暴露した”というスタイルの怪しげな“禁書”を専門に売るということで有名なようだが、実は絶版で手に入りにくい文学書や台湾関係史、中国近代史本も充実している。

 銅鑼湾地下鉄駅D4口から出てすぐ、駱克道に面する雑居ビルの急な階段を上がったわずか30平米の小さな店だが、天井まで続く本棚にぎっしりと貴重な本が並び、真剣に発掘すれば何時間あってもたりない。台湾書籍の卸売業に従事していた林栄基が20万香港ドルの自前資金で開いた書店で、当初の品揃えは完全に林栄基の趣味に走ったものだった。

 私が香港駐在であった2001年ごろはまだ、本に立ち読み防止のビニールがかかっていなかったので、立ち読みの大陸からの客でいつも狭い店内がいっぱいであった記憶がある。2014年、テナント料の高騰にともない経営難に陥った同書店は、スウェーデン籍を持つ実業家・桂民海が投資して創った巨流伝媒集団に身売りされ、林栄基は雇われ店長となっていた。だが、それでも店に行けば、たいてい林栄基が相手してくれた。

 私がこの書店に最後に立ち寄ったのは2015年5月、林栄基はいつもの店長席におり、私は彼に最近の売れ筋の本や、数あるゴシップ本の中で読む価値がある本の指南をうけながら、十数冊の本を買った。「そんなに買うなら、電話一本くれれば郵送してやるよ。日本には郵送で本を買う顧客がたくさんいる」というのが、林栄基と交わした最後の会話である。その後、彼を含む書店関係者ら次々と姿を消した。彼から勧められた選りすぐりのゴシップ本をもとに書いたのが拙著『権力闘争がわかれば中国がわかる』(さくら舎)である。

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福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師