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南シナ海仲裁判決、中国の「次の一手」に備えよ

「判決無視」を許せば、世界は暴走を止める術を失う

2016年7月20日(水)

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(写真:AP/アフロ)

 南シナ海の中国の領有権主張は7月12日に出されたオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所の判決により、完全に否定されることになった。中国が主張する九段線(南シナ海を牛の舌の形に囲む九本の破線、1953年に中国が制定した。清朝時代に南海と呼ばれた海域を中華民国が十一本の破線で囲んで領有を主張した十一段線を書き直したもの)は歴史的根拠がないと完全否定された。中国がフィリピンと領有を争うスカボロー礁などに勝手に建造物を建て、軍事拠点化しようとしていることは、国際法と照らし合わせ完全な違法行為、ということになる。中国は判決が出る前から、従う気はさらさらないと公言していたが、ならば、次にどういう態度に出てくるか、非常に気になるところである。今回のコラムは、中国の次なる動きについて考えてみたい。

予想通りの全面敗訴と完全無視

 ハーグ仲裁判決の内容を整理してみよう。

 これは2012年4月、フィリピンと中国がともに領有を主張するスカボロー礁付近において、フィリピン海軍が違法操業中の中国漁船を拿捕したのをきかっけに、中国監視船とフィリピン漁船が1カ月に及びにらみ合うという対立緊張がおきた、いわゆる「スカボロー礁事件」の解決策として、フィリピン側が国際海洋法裁判所の仲裁を仰ぐ提案をしたのが始まり。フィリピン側は仲裁裁判所に任せることを理由に軍を引いたが、中国側はそのまま居残りスカボロー礁を埋め立て、軍事施設の建設を進めるなど実効支配に出た。

 当時はアキノ政権であり、中国側に強く抗議を行うも止められず、2013年1月に、中国側の行為の違法性を問うため、正式に提訴をした。中国側はこの提訴に反発、提訴を取り下げるよう求める一方で、完全に裁判を無視。公聴会にも出席しなかった。そして3回の会議を経て今年7月12日夕に判決が発表された。

 主な内容は、①中国が主張する九段線内の資源についての“歴史的権利”の主張は法的根拠がなく国連海洋法に違反している。②中国側が礼楽灘で資源採集しているのはフィリピンに対する主権侵害であり、中国側は南沙諸島のサンゴ礁生態系に回復不可能なほどに損害を与えている。③中国側漁民の南シナ海における大規模なウミガメ漁、サンゴ漁はサンゴ礁生態系を破壊しており、これを停止させないのは中国側の責任である。④中国台湾当局が実効支配している太平島を含め、南沙諸島の島々は岩礁であり島ではない。したがって、EEZ(排他的経済水域)も派生しない。⑤天然の美済礁、仁愛礁、渚碧礁はすべて満潮時には水面下に隠れ領海も、EEZも、大陸棚も派生しない。中国の人工島建設はすでにフィリピンの主権権利を侵犯している。

 つまり中国側の全面敗訴だ。予想されていた結果で中国側も判決が出る前から判決の無効を主張してはいたが、いざ「国際社会の常識」が中国の行為を違法と決めつけるとなると、習近平政権のメンツはいたく傷つけられたことだろう。

コメント31件コメント/レビュー

南海問題に,ある一つの背景がある。
もともと台湾支配下だった島(中業島など)が,守備部隊が台風避難の間,あっさり他国に占領された。台湾の防衛力低下と,何もかもアメリカの指示を仰ぐ台湾の悲哀だ。恐らく,今晩にでも未だ台湾支配下の太平島が,また攻撃される可能性がある。完全に周辺島(いや,岩礁か)の砲火射程内だからだ。それに対して中国は神経びりびり。つまり,いまこの時でも,中国海軍の艦船が遠巻きに「警護態勢」入りだと想像する。これは「将来」のための心配ではなく,今晩にでも起こるかも知れない本物の交戦である。死人が出るかも。

アメリカの全部は間違っているとは思わないし。(ハリウッドがまあまあ好きだよ)
しかし「過剰に」他国を干渉するのは,正にそう多くはない悪趣味の一つに違いない。中国が玄関口の権益を主張するのは「覇権」で,沿岸国でもない他国がつべこべ言うのは「正義だ」とでも?辞書に「厚顔無恥」ということばがあるとしたら,いい注釈になるなあ。

中国もすべては正しくはない,数多い失敗,無礼,粗野の中でも,恐米風潮に流されないのは間違いなく正しい選択だ。南海問題は,中国側からすれば,恐らく朝鮮戦争とベトナム戦争の延長線上に位置するぐらいの覚悟ができているだろう。一連の激しい反発は,渾身の力で,アメリカにその覚悟を発信したことになる。バラク・オバマ様も,そろそろ理解できただろう。

しかし問題は,アメリカのコマたちである。果たして中国のメッセージを読み取る「心」と「頭」があるかどうか,これが疑問だ。(2016/08/25 19:09)

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「南シナ海仲裁判決、中国の「次の一手」に備えよ」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

南海問題に,ある一つの背景がある。
もともと台湾支配下だった島(中業島など)が,守備部隊が台風避難の間,あっさり他国に占領された。台湾の防衛力低下と,何もかもアメリカの指示を仰ぐ台湾の悲哀だ。恐らく,今晩にでも未だ台湾支配下の太平島が,また攻撃される可能性がある。完全に周辺島(いや,岩礁か)の砲火射程内だからだ。それに対して中国は神経びりびり。つまり,いまこの時でも,中国海軍の艦船が遠巻きに「警護態勢」入りだと想像する。これは「将来」のための心配ではなく,今晩にでも起こるかも知れない本物の交戦である。死人が出るかも。

アメリカの全部は間違っているとは思わないし。(ハリウッドがまあまあ好きだよ)
しかし「過剰に」他国を干渉するのは,正にそう多くはない悪趣味の一つに違いない。中国が玄関口の権益を主張するのは「覇権」で,沿岸国でもない他国がつべこべ言うのは「正義だ」とでも?辞書に「厚顔無恥」ということばがあるとしたら,いい注釈になるなあ。

中国もすべては正しくはない,数多い失敗,無礼,粗野の中でも,恐米風潮に流されないのは間違いなく正しい選択だ。南海問題は,中国側からすれば,恐らく朝鮮戦争とベトナム戦争の延長線上に位置するぐらいの覚悟ができているだろう。一連の激しい反発は,渾身の力で,アメリカにその覚悟を発信したことになる。バラク・オバマ様も,そろそろ理解できただろう。

しかし問題は,アメリカのコマたちである。果たして中国のメッセージを読み取る「心」と「頭」があるかどうか,これが疑問だ。(2016/08/25 19:09)

アメリカの全てが正しいわけでは無い。
しかしアメリカは自国の平和の為、過剰であるが他国に干渉し結果的に平和になる様には努めていた。
翻って現状の中国はどう見ても覇権を唱えたいだけであり、そこに平和への配慮は無く、あるのは只自分の思うように染めようとの欲望のみであろう。
例え此方が戦争を望まなくても、戦争は相手から仕掛ける場合も有り得るものなのだが不思議と日本国内メディアから発信される事は極端に少ないと感じる。
彼らは過度に自分(日本)らが加害者の立場に陥ることを怯え、現実を見ずに自傷行為を繰り返すが、暴力は外からやってくる事も多々あるとの現実を目をそらさず認識し、備えなければならないと思う。
只でさえアメリカ以上に乱暴で手順を踏まない手法が赤い国旗の国々によって行われている。
このまま無法を許せば私達の子供達は國の政府に戦争に駆り出されるよりも前に、爆弾を見舞われて終りを迎えてしまうのかも知れない。(2016/08/23 10:20)

(訂正)中国が「判決無視」を貫けば,米国のアジアにおける暴走を止める術が手に入る

 今度,南海問題で米国と二、三の同盟国が出端を挫かれた形で,中国虐めは失速したように見えても,アメリカはすぐには諦めないだろうと読んでいる。
 何故って?考えてみてください。・・・ボスニア・コソボ,アフガン,イラク,シリア・・・,二次大戦後,巨大軍事国家・世界最大ハッカ・盗聴国家アメリカの為政者が,ほとんど宗教的な情熱で民主原理主義を世界に押しつけ,世界をかき回し,巨大な利益を手に入れてきたからである。

 世界にアメリカを受け入れさせるのではなく,アメリカが世界を受け入れるべきだ。

 南海問題とは関係ないが,「中国に経済協力してきた」って?それなら「巨大市場から閉め出される」前に自分でとっとと出て行けばいい。そんな幼稚な植民地主義者的発想を捨てて,互恵的経済関係を維持したいなら,挙げ足をとるような敵視政策を止めるべきだよ。

 中国は,世界でもっとも速く貧困層をなくしつつある数少ない政府の一つである。一党支配でも民衆の支持は厚い。今後,極度に複雑な状況の中でも,超難しい舵取りが要求される。少なくとも劇場型民主主義や金銭支配民主主義,官僚独裁民主主義,軍産独裁民主主義は,今の中国には似合わないし,危険極まりない亡国の政治ゲームに見えて仕方がない。(2016/08/23 03:35)

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行天 豊雄 国際通貨研究所名誉顧問