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風前の灯!EU・トルコ間の難民合意

エルドアンの「独裁化」で、窮地に追い込まれるメルケル

2016年5月27日(金)

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 ドイツの首相、メルケルが、難民問題をめぐって窮地に追い込まれている。彼女にとって最後の頼みの綱であるトルコとの間で、不協和音が高まっているからだ。現在のままでは、欧州に流入するシリア難民の数を減らすためのトルコとの合意が、破綻する可能性もある。合意が暗礁に乗り上げて、難民の欧州への渡航をトルコが許した場合、欧州に到着する難民の数が再び急増することは確実だ。

焦点はトルコの対テロ法

 EU(欧州連合)とトルコの間で最大の対立点となっているのが、同国の対テロ法だ。この法律は1991年から施行されているが、少数民族クルド人のテロ組織や、過激組織「イスラム国(IS)」による無差別テロが昨年から多発していることから、トルコ政府は対テロ法の適用範囲を大幅に拡大している。

トルコのイスタンブールで開かれた世界人道サミットで席を並べたドイツ首相メルケル(左)とトルコ大統領のエルドアン(写真:Abaca/アフロ)

 たとえばこの法律は「テロリストを利する宣伝行為(プロパガンダ)」を刑事罰の対象としている。今年初めに、約1000人の科学者や教師がクルド人居住地域での戦闘を停止するよう求める抗議行動を行った。このキャンペーンに参加した多くの知識人たちが「テロリストのための宣伝行為」を行ったとして、起訴された。つまりこの法律は、テロ行為幇助の範囲を幅広く解釈しているので、市民が平和や人権の尊重を要求するだけでも、テロリストを助けたとして摘発される危険がある。

 EUは、「対テロ法は、トルコ政府の方針に反対する国会議員やジャーナリスト、知識人を刑事訴追するために悪用されている」として、同国に対してこの法律を改正するよう求めている。言論の自由や人権を尊重するEUの精神に反するものだからだ。

難民合意に暗雲

 だがEUそしてメルケルは、トルコに首根っこを押さえられている。EU圏に流入する難民の数が多くなるか少なくなるかは、トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアンのさじ加減一つにかかっているからだ。

 EUとトルコ政府は今年4月、難民送還について合意した。この合意によると、トルコは同国を通ってEU圏内に不法入国した難民を全て受け入れる。そのかわり、トルコにすでに滞在しているシリア難民約200万人のうち、約7万人をEUに合法的に移住させる。

 またトルコは、EUがそれまで約束していた難民対策費用30億ユーロ(約3600億円)を60億ユーロ(約7200億円)に倍増するよう要求した。さらにエルドアンは、トルコがEUに加盟するための交渉を加速するとともに、トルコ人がEUに渡航する際に必要となるビザの取得義務を今年6月までに撤廃するよう求めていた。

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「風前の灯!EU・トルコ間の難民合意」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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