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「欧州の覇権国」となったドイツの苦悩

ギリシャ危機で大きく広がったEUの亀裂

2015年8月27日(木)

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 ギリシャ政府は8月20日までに、欧州中央銀行(ECB)に対する債務32億ユーロ(約4480億円)を返済した。ドイツをはじめとするユーロ圏加盟国が7月中旬に、総額860億ユーロ(約12兆400億円)をギリシャに融資する第3次救済パッケージを了承したからである。ギリシャ救済について懐疑的なドイツ連邦議会でも、半数を超える議員たちが独首相アンゲラ・メルケルの要請を受け入れ、8月19日の議決で、救援パッケージにドイツが参加することにゴーサインを送った。

ギリシャ危機は終わっていない

 今年の夏、ギリシャは救われた。しかしその救済は一時的なものにすぎない。ギリシャ危機は、同じことの繰り返しである。2009年から欧州でギリシャ債務危機を観察してきた私は、深い既視感を抱いている。

 ギリシャという患者の病は完治していない。同国は、薬の投与によって一時的に危篤状態を脱したにすぎない。医師団と患者は、今後も数10年にわたり病との闘いを続けなくてはならない。

 なぜギリシャ危機は「同じことの繰り返し」なのか。その一例を挙げよう。2010年の第1次、2012年の第2次救援パッケージで、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は、ギリシャに2400億ユーロ(約33兆6000億円)の融資を決定した。その一部は同国に対して支払われている。

 しかも2012年には、銀行など民間の機関投資家に対し、ギリシャに対する債権の一部、1070億ユーロ(約14兆9800億円)を放棄させた。いわゆるヘアカット(債務減免)によって、借金の一部を棒引きにしてあげたのである。

 だがこれらの措置も、今年夏にギリシャが債務不履行とユーロ圏脱退の瀬戸際に追い込まれるのを防ぐことはできなかった。

 2011年には、ギリシャの債務比率(国内総生産=GDPに対する累積公的債務残高の比率)は171.3%だった。EUとIMFは、ヘアカットによって債務比率を2013年以降引き下げることをめざしていた。この値は2012年には156.9%に下がったものの、不況によりGDPの減少が深刻化したため、2014年には177.1%へ上昇した。巨額の融資もヘアカットも、期待された効果を生まなかったのだ。

 IMFのアナリストの中には、「ギリシャの債務比率は今後2年間で200%に達する」という悲観的な見方を打ち出す者もいる。

 EUとIMFの緊縮策を受け入れたにもかかわらず、経済状況は本格的には好転しない。ギリシャの有権者たちはそのことについて不満を爆発させ、今年1月の総選挙でEUとIMFに批判的な勢力を、政権の座に据えた。緊縮策を拒否することを公約としたチプラス政権の誕生によって、EU・IMFとギリシャ政府の間の交渉は、2010~2014年までの4年間以上に困難になり、両者の関係は物別れ寸前の状態まで悪化した。

 EU・IMF医師団の、ユーロ危機に対する特効薬は、緊急融資に緊縮策と経済改革を組み合わせたパッケージだ。この治療薬は、スペイン、アイルランド、ポルトガルに対しては効いた。これらの国々は、財政の建て直しに成功し、自力で国債を発行してマーケットから資金を調達する能力を回復した。

 だがEU・IMFの医師たちはギリシャが、スペイン、アイルランド、ポルトガルとは違う体質を持つ患者であることを見落としていた。ギリシャは、効率的な徴税制度や経済統計制度、土地登記簿など欧州では当たり前の経済インフラを欠き、農業と観光以外には産業らしい産業を持たない。品質が高く、輸出競争力が高い工業製品もない。同国政府は、2010年まで自国の公務員の数すら知らなかった。

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「「欧州の覇権国」となったドイツの苦悩」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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