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欧州に戦争が戻ってきた

欧州難民危機と対テロ戦争の袋小路(上)

2015年12月28日(月)

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 2015年は、「欧州に戦争が戻ってきた年」として世界史に残るだろう。過激派組織・イスラム国(IS)が11月13日にパリで130人の市民を殺害した同時多発テロは、新しいタイプの戦争行為である。

依然として厳重な警備体制下にあるパリ(写真:ロイター/アフロ)

国家対テロ組織の戦争

 ドイツ・フンボルト大学の政治学者ヘアフリード・ミュンクラー教授は、第一次世界大戦の地政学的な分析で知られる。彼はドイツの経済紙「ハンデルス・ブラット」に対して「戦争はカメレオンのように目まぐるしく姿を変える。我々欧州人は、シリア内戦の当事者になった。21世紀は平和の時代にはならないだろう」と予言する。

 新しい戦争は、第二次世界大戦のような国家対国家の争いではなく、テロ組織が国家に挑戦する。テロ組織には正規軍のような軍服も階級章も、交戦規則(rule of engagement)もない。

 ISはアルカイダ以上に分散型、非集中型の組織である。最高司令部は持たず、各国で自主的に活動する細胞がテロを実施する。いわばテロのフランチャイズ組織である。したがって、フランスや米国がシリアやイラクでISの拠点を空爆して幹部らを殺害しても、将来起こる11・13のようなテロ攻撃を防げるという保証はない。

 テロ組織は激しい空爆を受けた場合、拡散して潜伏し、数年間にわたって音無しの構えを取る。だがこれでテロ攻撃が終わったわけではなく、次の攻撃のための準備期間である。米国は2001年の同時多発テロ以降、持続的に「戦争でも平和でもない状態」にある。欧州もまた、同様の不透明な安全保障状況に突入したのだ。

 国家同士の戦争では、交戦国の間に「相手に与える苦痛」に基づく均衡が成立し得た。たとえば米ソ間では、戦略核兵器を使った攻撃は、核兵器によって報復されるために、自国が受ける被害も甚大なものになる。原子力潜水艦や空中発射型の巡航ミサイルが開発されたために、核を使った先制攻撃で敵の核兵器を全て破壊できる可能性はゼロに近くなった。この相互確証破壊(MAD=Mutually Assured Destruction)の原則が、米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた。

 だが対テロ戦争には、相互確証破壊の原則はあてはまらない。テロ組織の戦闘員たちは、自爆を覚悟の上で攻撃してくる。正規軍の兵士に比べると、「生き残ろう」という願望は薄い。したがって、テロ組織による攻撃は、正規軍による攻撃よりも、エスカレートする危険性が高い。

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「欧州に戦争が戻ってきた」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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