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ネットの謎棋士60連勝、熱狂生んだ陰の主役

AI対応で明暗分かれた囲碁と将棋

2017年1月6日(金)

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 正月早々、人工知能や囲碁の関係者が震撼する出来事が起きた。世界最大級の囲碁対局サイト、中国の「野狐囲碁」に「Master」と名乗る謎の棋士が登場し、世界トップクラスの棋士を次々と打ち破っているというのだ。

 Masterが撃破した相手は、中国の柯潔九段、韓国の朴廷桓九段、日本の井山裕太6冠など、各国の第一人者が含まれる。ネット上の対局なのですべて本人確認ができた訳では無いが、囲碁関係者の話によれば「プロ棋士側は本物」とのことだった。

 2016年3月、囲碁AI(人工知能)の「アルファ碁」が韓国のトップ棋士、李世●(石の下に乙、イ・セドル)九段を破った。5番勝負でアルファ碁の4勝1敗という結果から、「すでに人工知能が人間を超えた」という認識が広まり、私自身もAIが人間を超えたという記事を書いた。

 だが、なんだか釈然としない気持ちが残っていた。当時AIの実力は未知数で、李九段もアルファ碁を試すような打ち回しが目についた。ところが予想以上の力に戸惑っているうちに連敗し、本来の実力が発揮できないうちに勝負がついてしまったような気がしたのだ。

 今回、Masterの存在を知った時、人間がまだ上回っている可能性があるのではという未練はすっぱりと消えた。囲碁ファンの間では、アルファ碁の最新版というものから、藤原佐為(漫画「ヒカルの碁」の登場人物。幽霊)というものまで、話題は沸騰していた。正体は謎に包まれていたが、冷静に考えればこれだけのトップクラスの棋士をことごとく退けられる人間はおらず、人工知能であることは間違い無い。

 そして、1月4日、ついに正体が明かされた。米グーグル傘下のディープマインドが、アルファ碁の最新試作バージョンだと発表したのだ。韓国の対局サイト「東洋囲碁」にも「Magister」の名で参戦していたという。野狐囲碁の日本語公式アカウントによるツイッター上のコメントによれば、Masterは登場してから60連勝を達成したとのこと。短時間の「早碁」と呼ばれる対局はミスが出やすい人間にとって不利な面があるが、それを差し引いても桁外れの実力だ。

 記者も野狐囲碁にアクセスし、リアルタイムで柯九段との対局を観戦する幸運に恵まれた。もちろん自分の棋力ではわずかな部分しか理解できないが、Masterの着手からは「筋の良さ」や「美しさ」を感じることができた。

 だが、それより印象的だったことがある。負けながらも嬉々として対局に臨む棋士達の姿だ。妙なプライドにこだわらず純粋に盤上の真理を探求する姿は、見ているこちらも爽やかな気持ちにさせてくれた。アルファ碁がいくら強くなっても、その可能性や価値を知らしめるには彼らの協力が不可欠だ。勝負を楽しみつつ果敢に挑戦を続けた彼らこそ、まさしく「陰の主役」といえる。中国の古力九段の「人類とAIは手を携えて、囲碁の更に深い神秘を解き明かすことになる」というコメントは、AIと人間が共生する未来の形を示していると感じた。

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「ネットの謎棋士60連勝、熱狂生んだ陰の主役」の著者

広岡 延隆

広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者

日経コンピュータ編集部、日本経済新聞産業部出向を経て2010年4月から日経ビジネス編集部。現在は自動車など製造業を担当している。これまでIT、電機、音楽・ゲーム、自動車、製薬産業などを取材してきた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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