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鹿島の善戦に「ちくしょうですよ」とぼやいた男

スカパー!専務が漏らした本音とサッカー愛

2017年1月11日(水)

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クラブワールドカップ決勝戦で、レアルと鹿島の選手が並んで入場。この後、歴史に残る名勝負を繰り広げることになる

 「空気が変わる」という表現があるが、それを肌で感じることは稀だ。昨年12月18日に横浜で行われたFIFAクラブワールドカップ(CWC)2016の決勝戦。試合が進むにつれ、スタジアムの空気はまさに大きく変わっていった。

 世界トップクラスの強豪、スペインのレアル・マドリードと、鹿島アントラーズの一戦。大方の予想に反し、鹿島がレアル相手に一歩も引かない熱戦を演じた。

 スタジアムで観戦するという僥倖を得た記者はビール片手に席に着いた。今シーズンの世界最高選手賞(バロンドール)を受賞したクリスティアーノ・ロナウド、天才と呼ばれるモドリッチ、スピードと爆発力のあるベンゼマ…。記者を含め、多くの観客の目当ては世界屈指のタレント集団の華麗な技を生で見ることだった。ファーストタッチでボールを足元にきれいに収める技術に感嘆の声が漏れ、スタジアムはあたかもショーを見るような和やかな雰囲気に包まれていた。前半9分にベンゼマがゴールを決め、予想通りのワンサイドゲームになるかと思われたのも大きかった。

 だが実際は違った。鹿島の選手たちは前線から激しいプレスをかけ、執拗にボールを奪いに囲む。まさにインテンシティの高い試合内容で、前半終盤には、それが柴崎岳の同点ゴールとして実を結ぶことになる。

 鹿島の奮闘を目の当たりにして、スタジアムの空気は徐々に変わっていった。観客は皆、中腰で拳を握りしめ、鹿島のプレーに一喜一憂する。ショーを見るような和やかな雰囲気は薄れ、鹿島サポーターの応援歌に合わせてスタジアムの至る所から自然発生的に手拍子が起こる。記者も気づいたらビールを床に置き、声の限りに鹿島の選手にエールを送り続けていた。

 過去にも似たような場面に遭遇したことがある。思い出したのが、10年前に取材した長崎市長選だった。選挙期間中に前市長が暴力団員の凶弾に倒れ、代わりに娘婿が出馬。対抗馬として市職員も名乗りを上げた。当初は弔い合戦の様相で、娘婿が圧倒的に優位だと見られていたが、わずか3日間の選挙戦で空気がガラッと変わった。市職員は一日に十数か所もスポット演説を展開。最初は数人だった聴衆の数が日を追うごとに増え、最後の演説では熱気が地鳴りのように響いていたのが印象的だった。

 結果として、約1000票という僅差で敗れた娘婿陣営。「皆さんにとって父はこれだけの存在だったのですか」。落選後にマイクを持った前市長の娘の一言に、すべての敗因が凝縮されていた。まだSNSがなかった時代の話である。

浦和サポーターも魅了

 選挙とサッカー。ジャンルはまったく異なるが、CWCの決勝もまさに同じような空気だった。レアルのどこか緩慢なプレーに「強者のおごり」を感じ取った観客が、鹿島の必死に食らいつく姿勢に心を打たれ、次第に応援に熱がこもるようになる。もちろん鹿島がJリーグのチームだという点も大きいが、「俺たちが応援しなきゃ」という気持ちが自然と湧き出てきたのだ。

 隣に座る浦和レッズサポーターの同僚記者も例外ではなかった。試合前には「俺は鹿島がCWCに出ていることに納得していない」「鹿島がケチョンケチョンにやられるのを見に来たんだ」と一人で憤り、冷笑的に語っていたが、試合が進むにつれ誰よりも熱心に鹿島を応援していた。

 延長戦で力尽き、試合には負けたものの、鹿島の果敢な戦いぶりには世界中から賞賛の声が寄せられた。と同時に、所属するJリーグにも注目が集まった。いわく「あのレアルを追い詰めた鹿島が3位で終わったリーグとは一体何なんだ」と。

 誕生から23年。これまでJリーグが世界から注目を集めることはほとんどなかったが、CWC決勝をきっかけに大きく飛躍するチャンスを得ることになった。そんな日本サッカーにとって歴史的な試合を、テレビ越しに複雑な思いで見つめる男がいた。

 「正直に言ってちくしょう、あちゃーという思いですよ」

 男の名は小牧次郎氏。有料多チャンネル衛星放送「スカパー!」を運営するスカパーJSATの専務取締役だ。

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「鹿島の善戦に「ちくしょうですよ」とぼやいた男」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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