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待機児童問題、正社員優遇は正しいか

全国民に「福祉」を提供すれば破綻する

2016年5月19日(木)

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 最近、ニュースで「待機児童」という言葉を聞かない日はない。記事検索サービス「日経テレコン」で調べると、今年に入ってからの5カ月半で大手全国紙(日経、朝日、毎日、読売、産経)に「待機児童」という言葉が登場した記事数は1083だった(5月18日時点)。2015年1年間では1350だったので、今年に入ってから2倍近いペースでニュースに取り上げられていることになる。

 キッカケはご存知の通り今年2月、「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログが投稿されたこと。国会で取り上げられ、政治の争点として浮上した。働く女性にとって子供を保育園に預けられないということは、休職期間の延長かキャリアの断絶を意味する。長年続いてきた問題にもかかわらず、ここまで状況の悪化を食い止めてこなかった政治と行政の責任は重い。

 参院選を控えて与野党が競うように対策案を出し合い、厚生労働省も3月末に緊急対策を打ち出した。安倍晋三政権が5月末に閣議決定する「ニッポン一億総活躍プラン」にも、保育士の給与アップなどの対策が盛り込まれる。

 だが、これで待機児童問題が解決することは無いだろう。本質的な問題に、メスを入れていないからだ。

賃金だけでは解決しない

 厚生労働省によれば保育士の給料は月22万円程度で、全産業平均より11万円安く、定着率が低い一因とされる。待機児童問題の解消には、保育士不足の解消が必要だ。認可保育園の経営が基本的に補助金で成り立っている状況を踏まえれば、待機児童問題の解消には、当面の対策として公費を投入しての賃金アップが必要となる。ただし、前述の賃金の調査対象は、私立保育園のみ。認可保育園の4割を占める公立保育園の保育士は公務員で、給与が低いとはいえない。対象は厳密に見定める必要がある。

 ただ、賃金アップだけでは、保育士離れは解決しない可能性が高い。社会福祉法人「どろんこ会」の安永愛香理事長は、「年功序列が当たり前で、決められたルーチン作業をこなすだけの保育所も少なくない。これでは、若い保育士はやりがいを感じられない」と指摘する。給料が全産業平均に近づいたとしても、同水準の賃金でもっとやりがいのある職場があれば、やはり保育士からの人材流出は止まらない。

どろんこ会は現場のアイデアを取り入れて保育のプログラムを改善している

 どろんこ会では保育士全員がアイデアを出し合い、保育プランを毎年書き換えている。効果的なアイデアを実現するなど、成果を上げた保育士には給与で報いるという。そうした取組みが若い保育士の支持を集め、今年4月入社の求人への応募倍率は約8倍以上だった。全国の保育士有効求人倍率はほぼ2倍、つまり2人の求人に1人しか応募しない状況であるのとは対照的だ。

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「待機児童問題、正社員優遇は正しいか」の著者

広岡 延隆

広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者

日経コンピュータ編集部、日本経済新聞産業部出向を経て2010年4月から日経ビジネス編集部。現在は自動車など製造業を担当している。これまでIT、電機、音楽・ゲーム、自動車、製薬産業などを取材してきた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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