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「不良債権1%」が暗示する、銀行の静かな危機

だからみんな低金利になる

2016年6月10日(金)

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 「晴れた日に傘を貸し、雨の日には取り上げる」――。銀行の姿勢を揶揄する表現は、はるか昔から使われ続けている。それを象徴するような出来事を改めて目の当たりにし、頭に浮かんだのは「静かな危機」という言葉だった。

 「銀行や信用金庫は何度も来ますよ。『何かお手伝いできることはありませんか?』って。だから『手伝ってもらうことは何もない』って追い返しています。今ごろ来て何言ってるんだ、って感じですね」と笑うのは、都内で中小企業を経営する大沢洋一(仮名)さん。

銀行の経営はかつてなく安定しているが…(写真:ロイター/アフロ)

 大沢さんの経営する会社は昨年まで売り上げが上がらず、資金繰りも汲々としていつ潰れてもおかしくない状態だった。そんな文字通りの「中小零細企業」に金融機関は冷たかった。「融資してもいいけど、まず信用保証協会を付けてください」「この商品って売れるんですか?根拠を示してください」。金融機関の門を叩いた大沢さんに、担当者はこう言ったという。

 それでも、大沢さんは諦めずに新商品を発売した。悔しさもバネになったそうだ。今年に入ってその商品がヒットした途端、周囲が一変した。大沢さんは関連する特許や商標も抑えており、その技術を求めて一部上場企業が小さな会社に列を成している。

 当然、噂を聞きつけた銀行や信金も日参してくる。「苦しい時は話も聞いてくれなかったのに、『ノーリスクで融資できそう』と分かった途端これですよ。金融機関に目利き力なんてあるんですかね?」。温和な雰囲気の大沢さんも、ついに憤りを隠さなかった。

バブル崩壊が生んだ「ノーリスク偏重」

 銀行は1980年代後半から1990年代前半に、バブル景気に乗って不動産への杜撰な融資を膨らませた。結果は知っての通りだが、これを是正する手段として金融行政は厳罰化の方向に進んだ。国会や世論も巻き込んだ「騒がしい危機」の時代だ。

 大ヒットしたドラマ「半沢直樹」でも、銀行員の主人公と金融庁の検査官の間で激しいやり取りがあったのは記憶に新しい。「不良債権を隠しているんじゃないか?」と、厳しく問い詰める検査官の手を逃れるために資料を隠したりすれば、「検査忌避」として身内から逮捕者が出る。今の銀行や信金の経営幹部は、中堅以上のポジションでそうした出来事を目の当たりにしてきた世代だ。

 それ故、バブル崩壊以降、銀行はリスクを避ける傾向が顕著になった。例えば、焦げ付いた際に肩代わりしてくれる保証協会を使って中小企業融資のリスクを避ける。その一方で、貸し倒れの心配が相対的に小さい大企業や、すでに有名になった一部の優良中小企業には競うように低金利を提示する。失われたデフレの20年間に銀行業界で流行した施策の根底には、「リスクを可能な限り避ける」という共通した思考がある。

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「「不良債権1%」が暗示する、銀行の静かな危機」の著者

杉原 淳一

杉原 淳一(すぎはら・じゅんいち)

日経ビジネス記者

2005年、日本経済新聞社に入社し、大阪経済部に配属。2009年に東京に異動し、経済部で銀行や農林水産省、財務省、金融庁などを担当。2015年4月から日経ビジネスで金融機関を中心に取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官